「北海道ドクターヘリ災害時運用における机上訓練」に参加しました!vol.2 ~ヘリ参集から医療搬送実行までみんなで考える…~

町田です。
前回に引き続き「北海道ドクターヘリ災害時運用における机上訓練」に関する報告第2弾です。

会場の旭川赤十字病院と道北ドクターヘリ
(旭川赤十字病院ホームページより)

僕の「大規模災害時におけるドクターヘリ運用」のレクチャー、住田先生司会の「北海道における大規模災害時のドクターヘリ体制構築」が終わり、いよいよ「机上訓練」の始まりです。
今回は「旭川市を中心とした直下型地震災害」を題材に、住田先生の総監督、町田の運営の元でドクターヘリの運用に特化した動きについて時系列に沿って一つ一つ確認しながら行う方法をとりました。


~~~訓練開始!~~~

発災直後、まずはに札幌医科大学から統括DMATが道庁に入りDMAT北海道調整本部を設置し、さらに道庁の航空運用調整班にドクターヘリ担当として札幌のドクターヘリ基地病院である手稲渓仁会病院からスタッフを派遣することとなりました。そして今回の災害における患者の陸路・空路での搬送フローを作成してもらいました。(最初に道庁にドクターヘリに精通したチームが入り、搬送プランの作成やヘリ調整部門の立ち上げに関わることが重要です。)

続いて被災状況から道庁が被災地の道北ドクターヘリ以外の応援も必要と判断したため、厚労省からの指針に則ってドクターヘリ北海道ブロック連絡担当病院である旭川赤十字病院に連絡し、旭川赤十字病院は参集するヘリの調整を行いました。調整の結果は道央・道南・道東ドクターヘリすべての参集が必要で、3基地病院に参集を依頼することとなりました。
それに伴い道庁内にドクターヘリ調整部が立ち上がり、その下部組織として実際のドクターヘリ運航調整を行うドクターヘリ本部の設置が決まりました。

参集にあたって考えないといけないことが、ヘリ参集場所、そしてヘリ給油地点・・・これが決まらないとヘリは集まってこられません。また北海道の場合は参集までに長距離の飛行を要するために参集場所の給油が欠かせなくなります。被災地近くでドクターヘリを優先に給油ができる参集場所・・・なかなかないのが現実です。しかしドクターヘリ調整部で場所の調整を行い、さらに参集場所の格納庫内にドクターヘリ本部を行うこととしました。
【イメージ】ヘリ参集拠点をどこにするか?何機まで止められるか?
(旭川赤十字病院ホームページより)
【イメージ】参集拠点で確実に給油ができるか?代替地があるか?
(旭川赤十字病院ホームページより)

さらに参集拠点となる旭川医科大学に許可をとること、格納庫内の無線環境の確認まで訓練の内容に加えました。

いよいよヘリが参集するところですが、その前に現場からドクターヘリの要請が・・・実際に参集した複数機のドクターヘリが組織だって活動するまで半日から1日かかるため、被災地のドクターヘリが災害超急性期にどのような対応をすべきかも考えました。

各基地病院には旭川まで参集するまでのフライトプランを立てていただき、いよいよドクターヘリが格納庫内でドクターヘリ本部が展開されるのある旭川医科大学に参集(道北ドクターヘリは基地病院である旭川赤十字病院で待機が決定)しました。
そして旭川地区の拠点病院にあふれた重症患者の域外へのドクターヘリによる搬送オーダーがあり、それに対して搬送元の旭川赤十字病院にある被災地内DMAT活動拠点本部と受け入れ先である札幌医科大学にあるDMAT活動拠点本部での調整、ドクターヘリ本部での実際の搬送プランを組んでもらいました。
さらに細かい話ですが、札幌に搬送する場合“まずは活動拠点病院に搬送先を集める?”“ヘリポートがある病院には直接運ぶのか?”も議論となりました。そして旭川に戻る際の給油はどこで行うのか、夜になったら各ヘリはどこに駐機するのかも考えていただきました。

またドクターヘリがすべて活動中にさらに空路搬送の依頼が来た際に、道庁内の航空運用調整班の調整が必要なこと、他機関ヘリのフライトプランへのDMATへの周知方法も確認しつつ、やはり陸路での搬送がベースとなることを再認識することとなりました。

~~~訓練終了!~~~


災害時のドクターヘリの運用を知らない大部分の読者の方々にとっては、ここまで読んでさっぱり訳が分からないことだと思いますが、実災害時はこのような調整を短時間で行わないといけません。僕も毎年夏の政府訓練でヘリによる地域医療搬送の企画をしていますが、ここまでの調整に何か月単位がかかります。しかし熊本地震の時は手探りの中でこのような調整を1日かけずに行わなくてはいけないというとてもつらい思いをしたため、細かすぎて時間がかかってでも一つ一つの手順を丁寧に実行、振り返り、修正をしながら進めていきました。

そして今回の机上訓練を行った成果として、やはり事前に決めておかないといけないことの共通認識ができたこと、病院と運航会社で調整すべきことが分かったこと、何よりも「被災地にヘリを参集しないほうがより有効な運用ができるかもしれない」など地元の方々だからこそ気が付く様々な発見があったことです。


今回の訓練は急な企画・運営であったため参加された多くの方々に逆に助けていただきました。あらためてこのような貴重な機会をいただいた住田先生に心から感謝いたします。
今回の訓練やり方は災害時のドクターヘリ運用を多くの方々に知っていただく方法として、またそれぞれの地域の特徴を把握するうえでとても有効な方法の一つであることを実感できたとともに、これからも災害時のドクターヘリの運用について多くの方々に知っていただく活動を続ける必要性を強く感じました。

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