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“15分ルール”を目指して!~『富山救急医療学会』でのドクターヘリ特別講演~

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町田です。 2012年に富山県のテレビ局の取材を受けたことがあります。「日本一救急搬送時間が短い県にドクターヘリは必要か?」 という質問を頂き、群馬県も同じくコンパクトサイズ「コンパクトな県だからこそより1分1秒の時間短縮にこだわったオール富山での救急医療のていきょうができるはず!」と答えさせていただきました。 そしてそれから約3年がたち、今月24日に富山県ドクターヘリが誕生しました!そしてこのたび8月29日に開催された『第33回富山救急医療学会』において、ちょうど似たようなコンパクトサイズの県での運用ということでドクターヘリに関する特別講演をさせていただく機会を頂きました。   群馬県は片道20分でほぼ全県をカバーできるため、「消防覚知から医師接触まで30分以内」「消防覚知から病院搬送まで60分以内」という数値を明確に掲げています。通称『30分&60分ルール』として医療・消防の共通認識として活動しています。 富山県の場合はさらにコンパクトサイズの県であり、理論上では15分以内の傷病者接触も可能であり、またドクターヘリ側も『15分ルール』を目標に掲げています。 しかし、机上では15分以内が達成できるとしても、実際にはなかなかそうはいきません。 早くドクターヘリがたどり着いてもランデブーポイントの安全確保に時間がかかることがあります。 いつでも現場の近くに降りられる状況であればよいのですが必ずしもそうとはかぎらず、いかに早くヘリコプターを着陸させるかについて消防の方に良いヒントになるように群馬の取り組みをお話しさせていただきました。 また各医療圏に重症患者に対応できる病院が配備されており、また搬送時間を考えると地域の病院を生かした活動が有利であることも群馬と似ているところです。決定的治療開始を早めるためには受け入れる側の病院にもそれなりの準備が必要であり、そのことについてもお話しさせていただきました。 また最後に今後さらなるドクターヘリ活動の幅を広げていくために、富山県近くの隣県での多数傷病者事案発生時にスムーズにドクターヘリの機動性を生かすための仕組み作りが必要か、『広域連携のすすめ!』というキーワードを残しました。今後さらに北陸でドクターヘリが広がっていくときに、富山県から積極的に隣県に働きかけることで、かならず隣

厚生労働省「平成27年度第1回ドクターヘリ事業従事者研修」に参加しました。

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みなさまこんにちは、 堀口 です 。 先日 神戸 で行われました、表記の 研修に参加 してきました。 2 日間にわたって、ヘリコプターの飛行原理や特徴 に始まり、 ドクターヘリ救急システムの総論、ドクターヘリを使った医療でできること、その実際 などについて 学ぶことができました。多くは座学でした が、 動画もとりまぜて講義してくださり、興味深かったです。 ヘリ 機体の落下試験、エンジンが止まった時の緊急着陸の訓練 の様子 、水面に緊急着陸した時の水中での ヘリコプターからの 脱出訓練 の様子 、 着陸時に急に降下して ハードランディングしてしまった 海外での事故など、 特に安全に関する面での普段は見られないような動画を多く見ることができました。実際に経験するのは勘弁してほしいです ね。 2 日目の最後には職種別に分かれて、実際にあったドクターヘリ出動の症例や重複要請の事例をもとに、 それぞれの場面ではいかに対処するべきか、 小グループでのディスカッションと発表を行 いました。いろいろな基地病院からのメンバーが集まっていたので、大まかな行動は同じでも細部では群馬ドクターヘリとは違う考え方があったりして勉強になりました。 全体を通して、どの講師の先生も安全面の管理についてを繰り返し強調されていました。 ヘリに接近する際の注意点、離着陸時や飛行中の注意点、着陸地点の安全確保、無線交信における注意点、地上にいる消防本部・救急隊・支援隊・ CS(Communication Specialist) との連携の重要性について、改めて認識させられました。 アメリカの救急ヘリコプターは競争原理が強く働くためか、無理な運行や 24 時間飛行が原因と考えられる事故が多発しているそうです。日本のドクターヘリはのべ 13 万回以上の出動件数がありますが、これまで幸い一度の人身事故も起こしていないというのは、ドクターヘリに関わる多くの人たちが安全管理に十分気を遣っているからだということがよくわかります。 研修終了後は、 神戸空港 から羽田まで飛びました。聞き慣れた「飛行機が完全に停止し、シートベルト着用のサインが消えるまでそのままお席におかけになってください」というアナウンスが、新鮮に聞こえてきました。

実り多きシミュレーション!~群馬県ドクターヘリ『AACN通報訓練』の報告~

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 町田です。   すでに15年前より一部の高級車にAutomatic Crash Notification(ACN:事故自動通報システム)が導入されています。これはACN搭載車のエアバッグが開くと自動的にコールセンター(HELPNET:㈱日本緊急通報サービス)につながり、運転手の反応がなかったり会話の内容から必要であればすぐにHELPNETから消防本部に救急要請するシステムです。 これをさらに発展させ事故が起こると「位置情報」に加えて「運転席・助手席の予想死亡・重症率」がドクターヘリ基地病院においてあるタブレット端末に飛んできて、その情報をもとにドクターヘリ出動を目指すAdanced ACN(AACN:先進事故自動通報システム)がこの秋より大衆車にも導入されます。 ☆AACNの詳細については、   http://drheli-gunma.blogspot.jp/2015/04/aacn.html   AACNの全国展開に向けてこの秋から全国8基地病院で試行運用が行われますが、その1つに群馬県が選抜されたのにあたって、群馬県庁主催・HEM-Net全面協力のもと『群馬県ドクターヘリ通報訓練』を行いました。 当県より先に千葉県2基地および福島県ですでにドクターヘリを用いた実機訓練を行っており、そこですでに「AACNによりドクターヘリ早期要請、医療チームの傷病者接触時間短縮」の証明がされています。しかし群馬県ドクターヘリ運航要領では、現場救急の際に「消防の要請がないと出動できない」「消防の安全確保がないと着陸できない」というルールが決まっています。そうすると自然と「群馬のように飛行時間が短い県で早期要請に消防の安全確保がついてこれるか?」、また「本当にAACNの情報で直感的にヘリ要請をかけられるか?」という疑問がわいてきます。   これらの疑問を消防と基地病院が一体となって解決するために、今回の訓練はあえて関係者を一堂に一つの会場に集めて行いました。基地病院と消防本部の動きを同時進行に行い、さらに現場の状況は地図上で共有しながら、問題点を1つ1つピックアップしながらディスカッションを行いました。 AACN関係者、群馬県警・各消防本部、埼玉・栃木・茨城県ドクターヘリ関係者の 方々にお集まりいただきました。マスコミ各社の方

北陸初!富山県ドクターヘリが運航開始となりました。

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 ついに北陸にもドクターヘリが導入されました。 全国38道府県、46機目のドクターヘリとなる『富山県ドクターヘリ』が、昨日8月24日より富山県立中央病院を基地病院として運航開始となりました。 おめでとうございます! 8/24 富山県ドクターヘリ運航開始式 (写真提供:富山県立中央病院 小倉先生) 8/25から富山県ドクターヘリ運航開始です。 基地病院である富山県立中央病院屋上ヘリポートにて・・・ (写真提供:富山県立中央病院 小倉先生) ☆富山県ドクターヘリホームページ → http://www.toyama-drheli.net/ 救急車の現場への到着時間、病院までの搬送時間について、富山県は両方とも全国で最も短い県です(平成26年統計より)。 数年前までは「そのような県にドクターヘリはいらないのでは?」などの議会答弁もあったそうで、そのことについて以前当県も取材を受けたことがあります。 http://drheli-gunma.blogspot.jp/2012/11/blog-post_16.html 富山県ほどではありませんが群馬県もかなりコンパクトな県です。だからこそ1分1秒の医療介入にこだわることができるのです。 ドクターヘリの先進国であるドイツでは、国を挙げて事故発生から15分以内に医療が接触する「15分ルール」が設定されています。群馬県ドクターヘリではその広さからちょっと甘めに「30分ルール」を目標に頑張っていますが、富山県はまさに「15分ルール」で戦えるドクターヘリです。 『攻めの救急医療』を魅せていただけるとかなり期待しています。富山県、周辺各県の市民に大きな希望を与える翼になることを心より祈っております。 機体はAW109SP。 (写真提供:厚生連高岡病院 菊川先生) 今週29日に富山大学で開催される『第33回富山救急医療学会』で、町田がドクターヘリの特別講演をする機会を頂きました。少しでもお役にたてるお話になるように全力で準備中です・・・ ちなみに24日には中村センター長が『山形県ドクターヘリ運航調整委員会』で“災害時のドクターヘリ運用”の講演を行っています。 少しでも全国のドクターヘリ活動にお役にたてるように情報提供をさせていただくとともに、我々も全国から多くの

リスクとの戦い!~第1回群馬県ドクターヘリ安全研修会~

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町田です。 8月20日に開催された『平成27年度第2回群馬県ドクターヘリ症例検討会&第1回群馬県ドクターヘリ安全研修会』について、昨日の症例検討会の報告に引き続き今日は安全研修会の報告をします。 もともとHEM-Net(救急ヘリネットワーク)事務局より開催を推奨されていた「安全研修会」ですが、運航開始から5年以上たっているのに何かの理由をつけて今まで開催してきませんでした。しかし、昨今は空の事故が続いており安全なドクターヘリ運航の責任の一翼を背負っている立場としてこのままの状況では他道府県の関係者の方々に申し訳ないと感じ、ようやく今回安全研修会を開催する運びとなりました。 今回講師としてきていただいたのは日本ヒューマンファクター研究所の塚原利夫先生です。 ドクターヘリ運航は、航空と医療という全く異なる二つの分野の協働を必要とし他職種のスタッフが関与する活動であり、各種事故の多くはヒューマンファクターに起因することが事故の検証によって示されています。 元国際線機長であり、そして多くの事故の検証を行っている塚原先生のご講演はとても興味深く、そしてわかりやすく明日からでもすぐ実践できる内容がとても多く、あっという間の1時間半の講演でした。 塚原 利夫 先生 講演の内容については、ぜひ皆様も何かの機会で直接きいていただきたいと思います。 『安全』とは『リスクが制御された結果』であり、リスクと戦って安全を獲得する努力が必要だということが印象に残っています。 最近では病院のみならず様々な職場で安全にかかわる「安全管理者」という立場の方がいらっしゃると思いますが、英語では「Safety Manager」ではなく「Risk Manager」といいますよね!たしかに安全は管理できるものではなく、リスクと戦って安全はえられるものです。安全を獲得するためにリスクからさけるのではなく、時としてとリスクと戦う必要があるのです。そしてリスクと戦うときに他職種の方としっかり連携することが大切ですね。 塚原先生、本当に貴重なお話しを頂きありがとうございました。すぐにでも第2回を開催したいと思います。 塚原先生のご講演が終了後は、転院搬送の事案を用いてリスクマネージメントについてディスカッションしました。このディスカッションまで埼玉県ドクターヘリチーム

群馬県・栃木県・埼玉県・長野県のドクターヘリスタッフが集結しました!~平成27年度第2回群馬県ドクターヘリ症例検討会~

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町田です。 8月20日に『平成27年度第2回群馬県ドクターヘリ症例検討会&第1回群馬県ドクターヘリ安全研修会』を開催しました。あいにくの悪天候の中、今回も会場からあふれるほど多くの関係者に集まっていただき、県外からの方を含めて参加人数は150名を超えました。 今日はまず症例検討会について報告します。(安全研修会については明日報告予定です。) まずは毎回恒例の活動実績からです。 直近1年と今年度の活動実績について、とくに今回は活動の『時間』に関することを強調しながら各消防本部・病院関係者と情報をシェアしました。 活動実績に続いて症例検討です。 今回は消防本部からリクエストを頂いた2事案と、群馬県を舞台に隣県2機のドクターヘリが活躍していただいた(群馬県ドクターヘリは絡んでいない)事案について取り上げました。  特に隣県ドクターヘリに応援出動していただいた事案については、栃木県・埼玉県の両県ドクターヘリスタッフ、そして傷病者を受入した病院スタッフにもご発表いただきました。 まずは本事案が発生した館林地区消防組合より概要の説明です。    つづいて先着した栃木県ドクターヘリ 菊池仁先生より活動報告および課題点を挙げていただきました。 さらに応援出動していただいた埼玉県ドクターヘリ 安藤陽児先生より活動報告と広域連携の実情をお話しいただきました。 そして傷病者を受け入れていただいた太田記念病院救命救急センター 秋枝一基先生と埇田真彰看護師より、傷病者の経過報告と基地病院ではない受入病院からみたドクターヘリ活動へのご提案を頂きました。   皆様からの発表後終了後に、本事案の活動にかかわる消防からの疑問、各県ヘリ・病院からいただいたご意見に対してディスカッションを行いました。 症例検討会ではルールを新たに作ったり改定を行うことはできませんが、マニュアルを作成する際に想定されなかったことが起こったときにどのような対応ができるのか、現場から発信することと情報を共有することがとても大切です。   また今回は信州ドクターヘリ佐久 渡部修先生にもおこしいただき、他事案の検討で貴重なアドバイスをいただいたり、すでに群馬県ドクターヘリと群馬県ドクターヘ