『Young Investigator Award』 3年連続受賞!~AHA ReSS 2014 in Chicago 参加報告 vol.2~
皆様、お久しぶりです。集中治療科・救急科の小倉です。
私は当院にて重症外傷における外傷蘇生の研究を4年間行ってきましたが、今回、再び、前橋赤十字病院高度救命救急センター開発のTraumatic Bleeding Severity Score (TBSS)の演題をAmerican Heart Association Resuscitation Science Symposium 2014 in Chicago USAにて発表してきましたので報告させていただきます。
重症外傷患者の蘇生において、輸血の重要性は既に確立されたと言えます。充分な輸血療法を達成するべく、我々は大量輸血療法プロトコールを作成運用してきました。しかし我々はどのような患者にどのようなタイミングで大量輸血療法プロトコールを発動すればよいのでしょうか?
歴史を振り返ってみますと、この十年、世界中の人々が多くのチャレンジをしてきました。様々なスコアリングシステムで大量輸血療法の必要性を予測してみたり、数々の血液検査にてそれを予測してみたり。しかし予測精度の問題や、簡便性・汎用性の問題、検査コストの問題など様々な問題が指摘された結果、実際の臨床には結びつく事無く、今に至っているのです。
そのような時代の流れの中、我々はTraumatic Bleeding Severity Score (TBSS)を開発しました(図1)。
簡便性・汎用性・コストの問題を最大限に考慮し、スコアリングシステムでの大量輸血療法の予測にこだわりました。TBSSは、患者の年齢、収縮期血圧、腹部超音波検査所見、骨盤骨折、血清乳酸値の5項目のみで外傷性出血の重症度が評価できる、非常にシンプルなスコアです。このTBSSに基づき大量輸血療法に対するリスク分類をしてみますと、17点以上は大量輸血療法の高リスク群であり、95%の患者に大量輸血療法が施行されていました(図2)。一方12点以下は低リスク群であり、大量輸血療法は3.7%の患者にのみ施行されていました。
我々はこのリスク分類をもとに、大量輸血療法開始基準:Maebashi ルールを世界で始めて臨床導入しました(図3)。Maebashi ルールとは、TBSS17点で大量輸血療法プロトコールを発動するという、臨床現場における医師の行動規則です。
我々はこのMaebashiルールを、昨年4月より当院倫理委員会承認のもとに臨床導入しました。その結果、来院から輸血開始までの時間を有為に短縮し、適切なタイミングで充分な輸血療法を施行することで、重症外傷患者の生存率改善(60%⇒90%)に成功したのです。
またTBSSは、重症外傷における出血の重症度を指し示す指標といえます。どれだけ患者は出血しているのか?を評価することは、おのずとどれくらい輸血が必要か?を推し量ることになります。さらに外傷の診療では、大量出血のために凝固異常を来す患者が少なくなく、この急性外傷性凝固異常は、大量出血および出血性ショックによって惹起されるものが大半を占めます。そこで我々は出血の重症度指標であるTBSSが、急性外傷性凝固異常の発症をも予測できるのではないか?と仮説を立てました。研究の結果、予想通り、TBSSはAUC=0.927という非常に高精度で、急性外傷性凝固異常の発症を予測できることがわかりました。その他、ヨーロッパで汎用されているTASH Scoreという外傷性出血の重症度スコアと、アメリカで汎用されているABC Scoreというスコアを用いて同様の検討をしてみましたが、急性外傷性凝固異常の発症予測能力は、TBSSが最も高いということがわかりました(Bonferoni Adjusted p<0 .05="" font="">0>。
これら研究成果がAmerican Heart Association Resuscitation Science Symposiumで認められ、私は再びYoung Investigator Award(若手研究者賞)を受賞するに至りました。これで3年連続の受賞ということになり、大変名誉なことだと思っています。受賞歴を重ねた今、私の使命は、この研究成果を臨床の現場に還元することに尽きると考えます。今後はこのTBSSを日本全国に広め、日本中の外傷患者の救命率向上に貢献したいと思います。
私は当院にて重症外傷における外傷蘇生の研究を4年間行ってきましたが、今回、再び、前橋赤十字病院高度救命救急センター開発のTraumatic Bleeding Severity Score (TBSS)の演題をAmerican Heart Association Resuscitation Science Symposium 2014 in Chicago USAにて発表してきましたので報告させていただきます。
重症外傷患者の蘇生において、輸血の重要性は既に確立されたと言えます。充分な輸血療法を達成するべく、我々は大量輸血療法プロトコールを作成運用してきました。しかし我々はどのような患者にどのようなタイミングで大量輸血療法プロトコールを発動すればよいのでしょうか?
歴史を振り返ってみますと、この十年、世界中の人々が多くのチャレンジをしてきました。様々なスコアリングシステムで大量輸血療法の必要性を予測してみたり、数々の血液検査にてそれを予測してみたり。しかし予測精度の問題や、簡便性・汎用性の問題、検査コストの問題など様々な問題が指摘された結果、実際の臨床には結びつく事無く、今に至っているのです。
そのような時代の流れの中、我々はTraumatic Bleeding Severity Score (TBSS)を開発しました(図1)。
図1 |
図2 |
図3 |
我々はこのMaebashiルールを、昨年4月より当院倫理委員会承認のもとに臨床導入しました。その結果、来院から輸血開始までの時間を有為に短縮し、適切なタイミングで充分な輸血療法を施行することで、重症外傷患者の生存率改善(60%⇒90%)に成功したのです。
またTBSSは、重症外傷における出血の重症度を指し示す指標といえます。どれだけ患者は出血しているのか?を評価することは、おのずとどれくらい輸血が必要か?を推し量ることになります。さらに外傷の診療では、大量出血のために凝固異常を来す患者が少なくなく、この急性外傷性凝固異常は、大量出血および出血性ショックによって惹起されるものが大半を占めます。そこで我々は出血の重症度指標であるTBSSが、急性外傷性凝固異常の発症をも予測できるのではないか?と仮説を立てました。研究の結果、予想通り、TBSSはAUC=0.927という非常に高精度で、急性外傷性凝固異常の発症を予測できることがわかりました。その他、ヨーロッパで汎用されているTASH Scoreという外傷性出血の重症度スコアと、アメリカで汎用されているABC Scoreというスコアを用いて同様の検討をしてみましたが、急性外傷性凝固異常の発症予測能力は、TBSSが最も高いということがわかりました(Bonferoni Adjusted p<0 .05="" font="">0>。
これら研究成果がAmerican Heart Association Resuscitation Science Symposiumで認められ、私は再びYoung Investigator Award(若手研究者賞)を受賞するに至りました。これで3年連続の受賞ということになり、大変名誉なことだと思っています。受賞歴を重ねた今、私の使命は、この研究成果を臨床の現場に還元することに尽きると考えます。今後はこのTBSSを日本全国に広め、日本中の外傷患者の救命率向上に貢献したいと思います。
Learn
More and Challenge Again.
学ぶことに限界はなく、挑戦することに終わりはありません。
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