AHA ReSS 2013 in Dallas に参加しました。vol.1

こんにちは。皆様、お久しぶりです。小倉です。

先日、町田先生のブログでちょっと取り上げていただきましたが、小倉は今年もAmerican Heart Association Resuscitation Science symposium 2013 in Dallas U.S.A. (AHA ReSS 2013)で演題発表してきましたので、報告いたします。
 
 
 
American Heart Association Resuscitation Science Symposiumは、代表的な心肺蘇生法であるAdvancer Cardiovascular Life Support (ACLS)Basic Life Support (BLS)の元となる各国の研究データを持ち寄り、皆で議論する場所です。今年はテキサス州ダラスでの開催で、日本を代表とするアジア人の参加が目立ちました。採用演題数からみて、特に日本の研究データの採択率は高い方にあると見受けられました。
小倉は昨年から引き続き二回目の参加となったわけではありますが、今年は当科の藤塚先生と一緒に演題発表してきました。



学会では非常に多くの蘇生分野の議題が機論されており、小倉も非常に勉強になりました。特に、心肺停止蘇生後脳症に対する治療では、驚くべきデータが発表されました。それは、脳低体温療法と脳平温療法とで脳機能予後に有為差がなかったというものでした。この結論のみから判断すると、「心肺停止蘇生後脳症の管理では、脳を低温にして脳代謝を落とすことが重要なのではなく、脳の代謝が上がらないように平温に保つことが重要なのだ」ということになります。

これは我々からすると、大きな発見です。脳低体温療法は我々の施設でも積極的に導入し、心肺停止蘇生後脳症の患者様の脳機能予後改善のため、日々努力しています。しかし実際のところ、脳低体温療法における患者さんの管理は簡単ではなく、低体温にすることによる副作用も考慮しながら、慎重に行っています。低体温に保つと患者さんは非常に寒がりますし、必要以上に利尿がつくことで体内のイオンのバランスが崩れたり、また血圧が保てなくなったり、血液が固まりにくくなったり、感染症に弱くなったり…と、様々なところに低体温の影響が出ます。それら患者さんの変化を、我々はICUでモニターし、遅滞なく対応し、患者さんの脳機能の回復のため、努力するわけです。

しかし、「低体温ではなく、発熱をさせない程度の平温で管理する」、ということとなれば、患者さんに起こる副作用の発現確率も減少するでしょう。非常にメリットが大きいと予想できるのです。これはまだある一国の研究データによる発表であるため、その結果を鵜呑みにすることはできませんが、それでも、我々を驚かせるには十分なデータでした。その他の国における外部検証の結果が待たれるところですが、このデータは間違いなく、次回のガイドライン改訂に大きく影響してくるものと思われます。


今回の報告では脳低体温療法について取り上げましたが、これ以外にも興味深い発表が多くありました。最新のデータを持ち寄って、各国のスペシャリストが議論するこのAHA ReSSは、我々にとって非常に刺激的な学会です。この学会で議論されていることが、数年後のガイドラインに反映され、世の中に発表されてゆくのです。その現場を見て、議論を聞き、自分の頭で考える。我々も自施設データを積み重ねている施設です。このデータを世界に発信していけるよう、今後とも努力していこうと思います。


次回はこのAHA ReSSに発表した我々の演題についてご紹介します。

コメント

  1. 脳低体温療法と脳平温療法とで、脳機能予後有為差がなかったと言う事については、じぇじぇじぇ…。
    私も低体温療法の患者様の管理は簡単では無いと聞いたこと有ります。
    大発見ですね!
    貴重な情報ありがとうございます、感謝です。
    勉強に成りました。
    小倉先生・藤塚先生、学会での発表お疲れ様でした。

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  2. 小倉先生は、国内だけでなく、海外での講演が多く、日本を代表するドクターとしての奮闘していらっしゃるんですね。
    これからも、日本を代表するドクターとしてご活躍されることを、群馬県民として誇りに思いつつ、ドクターヘリを追い続けます(笑)頑張ってください!!

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  3. 岡田さん、コメントありがとうございます。
    本ブログでは最新の知見や発見なども交えながら様々な情報を提供していこうと考えております。

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  4. 渋川指揮支援119さん、コメントありがとうございます。
    スタッフ一同、国内だけではなく海外でも活躍できるように頑張ります!もちろん大事な地域の救急医療のためにも毎日尽力します。

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