移動はとても怖いのです・・・~ドクターヘリによる病院への医療スタッフ派遣~

町田です。

10月に入っても真夏日を記録するなど、相変わらず変な気候が続いています。しかし山々の木々が少しづつ赤や黄色に色づき始めたり、朝夕の涼しさ(山間部では寒さ)に秋を感じる今日この頃です。


患者さんにとって検査のために検査室へ移動したり、手術後にICUに入室するために移動したり、またとある病院の重症患者さんを3次救急対応病院へ転院する際の移動など、患者さんにとって様々な場面で『移動』という行為を伴うことがあります。

実はこの『移動』には危険がたくさんはらんでいます。

ERで重症患者さんを初療していて画像検査が必要になった際に、状態がまだ不安定(ショック状態の継続など)で検査室に移動すると検査中に急変するリスクがあります。例えば重症外傷患者さんを安定化させずに撮影に結構時間がかかるCT検査を行っていると、その途中でショック状態から心肺停止に陥る可能性があります。CT検査は『死のトンネル』と呼ばれたこともありました。
もちろん今は重症患者の診療ガイドラインがきちんと整っていて、そのような状態でのCT検査は少なくても3次対応病院では行われておりません。

また、とある病院で発生した重症患者さんについて3次対応病院に転院搬送の依頼が来ることがあります。搬送元病院の先生の情報から、時としてそのまま救急車で搬送すると搬送中に心肺停止に陥るリスクが高いと感じることもあります。もちろん搬送元の医師の初療により安定化させたのちに搬送できれば良いのですが、病態によってはなかなか安定化が困難な場合があります。
このような事例は結構あります。搬送中の救急車内では救急救命士と同乗した搬送元病院の医師や看護師の必死に努力されていますが、当院ER到着直後に心肺停止に陥るということもあります。
ドクターヘリ出動事案においても、現場出動はオーバートリアージ許容であるので中等症の症例もありますが、転院搬送についてはほぼ全例重症度が高く(だからドクターヘリによる転院搬送になるのですが)、実はとても緊張感が漂う活動になることも多々あります。ただある病院からある病院に患者を運ぶだけではなく、時には搬送前に救急科医による治療介入を行ってから、より安定化した状態で患者を搬送します。ヘリポートがない病院からのドクターヘリによる転院搬送ではその病院の直近ランデブーポイントで患者さんの引継ぎを行いますが、病院からランデブーポイントへの移動さえ危険な状態もあります。
ヘリ内で行える活動にはある程度制限がかかります。ヘリでの搬送を決断した際には、
ヘリに乗せる前の救急車内での初療や搬送元病院での診療が安全な搬送を左右します!
このような事態の時は、患者さんをあえてその病院から出さずに、直近のランデブーポイントからドクターヘリ医療スタッフがその病院にお邪魔させていただきます。ランデブーポイントよりも病院にいる方が人手、資器材に余裕があり、救急科医がお邪魔することでより高度の処置が行うことが可能になります。
小児の急変、外傷ショック、大動脈破裂などで病院から動かすことさえ危険な状態な患者さんに対して、当院の救急科医師、救急外来看護師をその病院の初療室(時として病棟)に派遣して、そこで高度の処置を行い状態が安定化したら転院搬送を行うというミッションを行ってきています。
病院に地上ヘリポートが併設しているとさらに迅速な活動が可能になります。

重症患者さんを助けるために時としてリスクの高い『移動』が伴うことがあります。しかしその移動をより安全かつ迅速に行うことも僕たちの救命救急センターに課せられた使命です!

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