日没まであと30分・・・~前橋日赤だより「博愛」より vol.1~

集中治療科・救急科&フライトドクターの町田です。

今日は群馬にも春一番が吹き荒れました。暖かい日と思いきやあまりにも風が強く、春の気配はまだ先に感じました。ドクターヘリも14時頃に地上へリポートの群馬ヘリポートに緊急退避となりましたが、群馬ヘリポート退避後もさらに風が強くなりそのまま運休になりました。

前橋赤十字病院は地域医療支援病院です。地域支援病院の活動の中のひとつに広報活動があり、近隣の医院、クリニックに“前橋日赤だより「博愛」”を定期的に配布しています。ちなみに当院広報委員会の委員長は当科高橋医師で、時々当科スタッフにも原稿の依頼が来ます。2011年新年号では、当科中村医師が“10月の日本APECへのDMAT出動”、私が“日没ギリギリのドクターヘリ出動”についての記事が掲載されました。

今日から2回にわたってこれらの記事を本ブログで紹介させていただきます。


~前橋日赤だより「博愛」より vol.1~
『日没まであと30分・・・それでもドクターヘリは傷病者のもとへ向かいます!』
集中治療科・救急科 町田浩志

12月某日の日没時間は16時29分、ドクターヘリ要請受入時間は15時59分であった。この日はすでに3件の出動があり、ドクターヘリは群馬の空を西へ東へ飛びまわっていた。フライトスタッフはドクターヘリ運航終了時に毎日デブリーフィングを行い、その日の反省とスタッフ全員への周知事項の確認を行っている。安全かつより有用なドクターヘリ運航のためだ。3件目の出動が終わりこの日も15時50分頃よりCS室でデブリーフィングを行っていた。時計の表示は15時58分、“この日はこれで終了だな”と思っていたところでCSのホットラインが鳴り響いた。


夕闇迫るランデブーポイント
“要請だ!”機長、整備士、フライトドクター&ナースは迷うことなく1階から屋上ヘリポートまで駆け上がり、要請から4分後の16時2分にドクターヘリは離陸した。離陸してからCSから無線で傷病者情報が入る。“交通事故、顔面に挫傷あり、JCS 2・・・”。交通事故で頭部外傷により重症の可能性が高い。ドクターヘリは日没時間までに帰還するルールがあるため、機長から“16時25分にはエンジンスタートです!”と時間の確認あり。ランデブーポイントの位置から考えると現場活動時間は10分しかない。しかしドクターヘリは現場で1分でも早く高度の医療を開始することが目的であり、ドクターヘリでフライトドクター&ナース、および必要な医療資器材を現場に搬送することが第一である。“重症であれば僕らを残してヘリは先に帰還してもらおう!”、そう考えながらヘリはランデブーポイントに着陸し、すでに到着していた救急車内に乗り込んだ。

日没ちょうどに当院へ帰還
救急車搬送では20分以上かかるところを、要請から約10分で傷病者に接触。救急隊によってすぐに観察できるよう脱衣は完了済で、すばやくABCDをチェックし安定していることを確認、ナースもてきぱきと末梢静脈路を確保。全身観察でも致命的な外傷はなさそう。しかし受傷機転からは高エネルギー外傷のため救命救急センターでのさらなる精査加療が必要だ。この時点で観察を開始してまだ5分ちょっと、“今の状況ならヘリで搬送可能”と判断。速やかに救急車からヘリに傷病者を移動し16時24分に離陸。そしてドクターヘリは妙義や荒船の山々に沈みかけている夕日を正面に受けながら、16時29分に当院屋上へリポートに着陸した。“日没時間に間に合った!”ヘリポートには救急科スタッフがすでにスタンバイしていて、傷病者を救急外来に搬送し診療が引き継がれていった。

“要請があれば可能な限り傷病者のもとへ向かう”、そのことをフライトスタッフ全員が常に持って、今日も群馬の空を飛んでいる。




ところで本ブログに相互リンクさせていただいている“沖縄県ドクターヘリスタッフブログ”に、小学校での講演会の話題が掲載されていました。群馬県でも3月1日に道徳の時間とリンクした形で小学校でドクターヘリ講演会が開催されます。沖縄の講演会は大盛況だったようで、小学校に対する講演会を行うことに大きな意味があることを感じることができました。
☆沖縄県ドクターヘリスタッフによるの講演会の様子はこちら→http://drhekiokinawa1.ti-da.net/
ただいま、準備真っ只中・・・沖縄からアドバイスお待ちしております!

コメント

  1. お疲れ様です!
    広報紙も担当されてるんですね。手に汗握る臨場感が伝わってきます!学会では前橋さんのドクヘリのお話聞かせていただきました。23日のテレビ放映、支部でも待ち構えてたのにうっかり見逃してしまったー!と思ってたのでよかったー、9日はがっちり抑えますね!
    今日は救護課長のNZ派遣が決まりパタパタとしてました。力のなさを噛み締める昨今です。自分の役割をしっかり認識し、日々の仕事を積み上げる事が救護事業を支えることに繋がると信じて、今はとにかく前へ進みます。
    遅ばせながら、リニューアルお疲れ様です&2万アクセスおめでとうございます!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

    返信削除
  2. nakaさん、はじめまして。ホームページ製作・更新を担当している@JUNです。いつもコメントをありがとうございます。
    >リニューアルお疲れ様です&2万アクセスおめでとうございます!
    ありがとうございます。とても励みになるお言葉で、嬉しかったのでコメント返させていただきました。これからもよろしくお願い致します゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚

    返信削除
  3. nakaさん、コメントありがとうございます。町田です。
    当院に広報委員会があり、病院のホームページや広報誌など病院の広報活動をおこなってはいます。とても大切な仕事で、僕は委員会のメンバーではありませんが時々原稿の依頼が来た時はできるだけ協力しています。
    NZ地震の件はとても心が痛みます。ただ祈るのみで何もして上げられることができず、自分の無力さを痛感しています。救護課長さん、お気をつけていってきてください。

    返信削除
  4. @JUNさん
    今日は。初めまして☆o(^▽^)o
    いつも楽しく拝見&勉強させていただいています!
    丁寧に作られている文章は自分のような素人にもわかりやすいですし、まめに更新されているところも足を運びやすいです。
    その裏でスタッフの方のご苦労は如何ほどかと。。
    アナロギストにはブログの時点で既にわかりませんが、少しリニューアルするにしても構成を考えるところからアップするまで大変な時間と手間がかかるのかなと思いました。そういった皆さんの努力が、アクセスにつながっているんですね。これからも1ファンとしてひっそりと応援させていただきますU・x・U ♪

    返信削除

コメントを投稿

コメントは管理人が確認の上、公開の判断をさせていただいてます。状況によっては公開まで数日頂くことがありますのでご了承お願いします。

このブログの人気の投稿

先日ブログでご紹介した新型コロナワクチン筋注方法について訂正があります

新年度集合写真

OB/OGからのコメントをいただきました。