コロナワクチンを1回接種するだけで入院リスクを9割下げる!?(論文紹介)

丸山です。
全国的にも一般の方へのコロナワクチン接種が開始され、ワクチン接種を行うか否か悩まれている方もいらっしゃるかと思います。
当院では4月から本格的にワクチン接種が始まり、私は先日2回目のワクチン接種を終えました。1回目のワクチン接種では痛みもなく注射部位の腫れもなく、筋肉注射であるにも関わらず「いつもの皮下注射の予防接種と何も変わらないなぁ」という印象でした。2回目に関しても注射の時は「1回目と比べると痛いかな?」程度でした。しかし、夜になって就寝する頃から風邪を引いたときのような全身倦怠感と体熱感が出てきてしまい、寝付けなかったため解熱鎮痛薬を内服して就寝しました。翌日にはこれらの症状も落ち着いて問題なく過ごせています。
2回目の接種では発熱や全身倦怠感を比較的多く認めるようですが個人差が大きいようで、何事もなかった人もいれば、3日程度症状が続く人もいました。印象としては若い人の方が2回目のワクチン接種後の発熱・全身倦怠感は出現しやすいように思います。COVID-19に罹患し数週間辛い思いをするところを1日で済ませることができるのだとすれば止むを得ない副反応なのではないかと個人的には感じます。また、ワクチン接種の真価は罹患予防と同時に重症化予防にあると言えますが、なんと1回目のワクチン接種の時点で入院を要するようなCOVID-19になる確率が9割減少するという論文報告がありましたので、ご紹介させていただければと思います。

論文はLancetという著名な雑誌から出版されました。タイトルは「Interim findings from first-dose mass COVID-19 vaccination roll-out and COVID-19 hospital admissions in Scotland: a national prospective cohort study(和訳 スコットランドでのCOVID-19ワクチン接種初回投与の大量展開とCOVID-19入院からの中間所見:全国的な前向きコホート研究)」です。
URLはこちら↓
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00677-2/fulltext

イギリスのスコットランドでは2021年4月13日時点で全体の約50%が初回のワクチン接種を済ませているようです。この研究は2020年12月から始まった初回のコロナワクチン投与の効果についてスコットランド在住の約500万人(全人口の99%)のデータを用いて調査を行っています。
この研究では18才以上の4409588人中, 1331993人(30%)の国民がワクチンを接種しました。統計解析には「時間依存性Coxモデル」および「Poisson回帰モデル」というものを使用しており、時間も考慮した解析がされているため「○人中○人がCOVID-19で入院したので入院率は○%でした!」と簡潔に説明することができないのですが、解析の結果、1回目のワクチン接種後28~34日におけるCOVID-19関連の入院が89%減少しました。日本でも使用される予定のファイザー製ワクチンで91%、アストラゼネカ製ワクチンで88%減少となっております。

この「90%減少!」というのがどういう意味なのか分かりにくいため、改めて解説させていただければと思います。
ここでいう「90%減少」というのは「ワクチンの有効率」を指し、英語ではvaccine efficacyと呼ばれ、次の式で計算されます。

(1-接種者の入院率/非接種者の入院率)×100

ワクチン接種をしない場合と比較し、ワクチン接種をした場合、COVID-19で入院する人の割合を90%減らすことができるという意味となりますが、接種群と非接種群の人数が同じ場合、このワクチンの有効率が90%の時、接種群で発症した人数が非接種群で発症した人数の1/10(あるいは非接種群の入院人数が接種群の入院人数の10倍)となります。
例えば、ワクチン接種をしていなければ200人中100人がCOVID-19で入院するとしたら、ワクチンを接種した200人のうち入院するのは10人になります。こう聞くと「ワクチンを使うと200人中90人も助かるんだ!すごい!」と感じてしまいますが、ここには数字の落とし穴があります。実は全体の人数が100万人だったとしても、非ワクチン接種群が100人入院、ワクチン接種群が10人入院だとしたらこれはワクチン有効率90%なのです!「ワクチンのおかげで100万人中90人が助かりました」ということになります。ワクチンの有効率の計算は入院率(もしくは発症率)の比で行っているため、このようなことが起きるのですね。

実際のところ、本研究におけるCOVID-19の入院率は0.9%であったため、ワクチン接種によって入院率は0.09%になったということになります。この結果を日本の人口に当てはめると単純計算になりますが「日本全国民1.2億人がワクチン接種をしたら、COVID-19に罹患し入院するはずだった97万人が入院せずに済む」ということになります。これが本当なら崩壊寸前の逼迫(ひっぱく)する医療体制が救われるかもしれません。
コロナワクチンも薬である以上リスクもあります。よく考えた上で、是非ワクチン接種をしていただければと思います。


 

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