2021年1月8日金曜日

COVID-19入院患者の死亡リスクはインフルエンザ入院患者の死亡リスクの5倍です

丸山です。読者の皆様、本年もどうぞよろしくお願い致します。
残念ながら新年早々緊急事態宣言が発令されてしまいました。私自身も今までは「コロナは恐れすぎなくて大丈夫」という発信をすることが多かったですが、事情が変わってきました。群馬県でも1日に90人のコロナ陽性者が発生する状態にとうとうなってしまい、群馬県内の重症ベッドはほぼ満床でなんとか調整をしている状況です。隣県でも発熱で救急車を呼んだ高齢者が20件以上の病院に断られた事例もあり、コロナ患者受け入れ困難は東京だけの話ではなくなってきました。

今回はブログのタイトルの通りCOVID-19とインフルエンザを比較した研究の紹介です。論文はComparative evaluation of clinical manifestations and risk of death in patients admitted to hospital with covid-19 and seasonal influenza: cohort study. BMJ. 2020 Dec 15;371:m4677.というものでアメリカにおけるCOVID-19入院患者と過去(2017-2019年)の季節性インフルエンザ入院患者を比較したものです。
結果ですが、インフルエンザと比べると、COVID-19の死亡率は約5倍(ハザード比4.97)、人工呼吸器が必要になる可能性が約4倍(ハザード比4.01)、ICUへの入室率が約2.5倍(ハザード比2.41)でした。そして、インフルエンザと比較し死亡率がより高い患者さんは認知症のある75歳以上の患者、肥満、糖尿病、慢性腎臓病のいずれかがある方でした。

COVID-19は大半の若い人にとっては無症状もしくはただの感冒(風邪症状)でしかないですが、若い人であってもインフルエンザより重症化しやすい上に、高齢者や基礎疾患がある人にとっては致命的になり得る疾患です。そして、エアロゾル感染し得るという特徴のため、患者1人に対して必要な医療資源がインフルエンザの比ではなく、なんとか体制を整えた病院でやっと患者さんを受け入れることができる状態です。飲食・観光・エンタメを含む様々な業界が経済的に切迫した状況にあるのは重々承知の上で、自分のためにそして自分の身近な家族のために、今は外出を控えコロナがこれ以上急速に拡大しないよう努めていただければ幸いです。
医療従事者と各々の読者皆様ではそれぞれ違う苦労があるかと思いますが、共にこの状況を乗り越えていきましょう!!


2020年12月29日火曜日

当科診療スタッフ紹介:垣本先生

 今回は当科診療スタッフをご紹介いたします。インタビュー形式でのご紹介です。墨東病院からいらした垣本先生です!どうぞ!!

Q1: ご略歴を教えてください。
2020年10月から12月までの3ヵ月間研修させていただきました垣本康平と申します。私は東京逓信病院で初期研修後、東京都立墨東病院の救急科シニアレジデントとして勤務しており、現在医師4年目になります。

Q2: 当院・当科を選んでくださった理由はなんでしょうか?
地域の重症患者が集約される環境で豊富な症例を経験できること、墨東病院にはない分野であるプレホスピタルケアを経験できることに魅力を感じ、こちらでの研修を希望させていただきました。

Q3: 実際に3ヶ月診療に携わっての感想を教えてください。
ERは地域の救急医療の最後の砦としての役割を担っており、他の病院からの転院搬送も多く、絶え間なく患者の受け入れを行っておりました。私が研修させていただいている間、コロナ禍ということもあり病棟は常に満床に近い状態でしたが、病院全体の状況を把握しながら各科や病棟との調整を行い、断らない救急医療を実現できている点が印象的でした。プレホスピタルケアのOJTにも参加させていただき、大変貴重な経験になりました。
ICUでは他科の重症症例や予定手術の術後管理などを含め、幅広いジャンルの症例を救急科が主体となって管理しており、短期間に多くの症例を経験することができました。毎日のカンファレンスで自分が考えた治療方針をプレゼンテーションし、指導医の先生方から丁寧にフィードバックをいただける点が非常に勉強になりました。

Q4: ブログ読者の皆様に一言お願いします!
ERでの初期対応、ICU管理、プレホスピタルケアなど、救急医として必要なスキルをバランス良く身に付けることができます。スタッフの方々は皆様とても親切で働きやすく、短期間でしたが充実した研修になりました。ありがとうございました。

以上、垣本先生でした!
垣本先生は12月28日を以て当院での研修を終了されました。今後も同じ救急分野で先生のご活躍を祈念しております。



2020年12月22日火曜日

【医療従事者向け】病院におけるwithコロナ時代の心肺蘇生

丸山です。
新型コロナウィルスの第3波がやってきて、様々な場面でより一層コロナ対策を意識した対応が求められるようになりました。その1つが心肺蘇生法です。

目の前で人が倒れている!
意識がない。 → 周りの人に助けを求めよう!
呼吸も。。。していない → 胸骨圧迫(心臓マッサージ)だ!

今まではこのようにより早く心臓マッサージをするように指導されてきました。しかしながら、昨今のコロナウィルス感染拡大に伴い感染予防の観点から心肺蘇生の方針が大幅に変更になりました。
今回は病院におけるCOVID-19対応救急蘇生法のご紹介です。COVID-19の患者の話かーと侮るなかれ、現在はどこに無症候性キャリア(潜在的にCOVID-19に感染している人)がいるかは分からないので今後はこれから紹介する心肺蘇生法がスタンダードとなっていく可能性も十分あり、当院ではすでに院内急変患者の対応は全てCOVID-19患者用の装備で行っています。ただし、これからお話しする内容はあくまで【病院における】蘇生法ですので街中での心肺蘇生とは別物ですのでご注意ください(最後に【病院外用】の「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法についての指針」についてもご紹介します)。

今回の参考文献は日本蘇生協議会のHP(https://www.japanresuscitationcouncil.org/)からになります。11月中旬に同学会から「病院における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応救急蘇生法マニュアル」が発布されました。この中の今までとの相違点を私なりにピックアップしてみました。参考になれば幸いです。



まず今回の改訂のポイントは「医療従事者の感染リスク軽減が第一としつつ、救命に対応しなくてはいけない」ということに尽きます。具体的には以下の内容となります。
① PPE(今回はエアロゾル感染防護用個人防護具を指す)を着るまでは胸骨圧迫を開始してはいけない。
② PPEを着るには時間がかかってしまうので、初めに数人だけサージカルマスクと手袋装着のみで患者に接触することを許容する。しかし、出来ることは「心停止の確認」「AED貼付」「電気ショック」のみ!
つまり、「心停止を疑ったらまず胸骨圧迫!」ではなくAEDを持ってきて貼ることになりました。これは胸骨圧迫の時に肺も一緒に押されてしまい、患者から断続的に呼気が発生するからです。同様の理由で患者のところへ行ったらまず「サージカルマスクを患者につける」ことも勧められています。今までなら「死にそうな人の鼻と口を塞ぐなんて言語道断!!」と怒られてしまいそうな行為ですが、感染予防のためには仕方がないということのようです。ただし、初めから医療者がPPEを着ている状態(例えばCOVID-19と分かっている患者さんの診察中など)で目の前の患者が心停止した場合はすでに感染対策は出来ているため、いつも通り胸骨圧迫を開始して誰かがAED(or 除細動器)を持ってくるのを待ちます。
③ PPEを着ているとしてもエアロゾル予防のため完全な密閉が得られなければ補助換気をしない。
④ 完全な密閉が得られるようにバック・バルブ・マスクを用いる時は「2人法」で密閉担当と換気担当を分ける。そして、バック・バルブ・マスクには高効率微粒子エアフィルター(HEPA)を用いること。
⑤ 気管挿管は熟練者が行い、挿管処置時は胸骨圧迫を中止すること。

      
こちらも徹底したエアロゾル感染予防を推奨しています。PPEで感染防護が既に出来ているとしても念には念を。隙間ができるようなら換気(呼吸の補助)はしないし、口腔内を覗く気管挿管の手技の時は胸骨圧迫で呼気が発生すると真正面から浴びることになるので必ず胸骨圧迫はやめてもらう。そして、それを正確に迅速に行うためにベテランに任せること!という内容になっています。

上記の内容を読んでいると「公園にPPEなんか置いてないよ。」「うちのクリニックに気管挿管のプロなんていないよ。」という声が聞こえてきそうですが、あくまでこれは設備と体制が整った【病院用】心肺蘇生法です。病院外での心肺蘇生はまた別の指針が出ていまのでそちらもご紹介します。日本救急医療財団が発布しているものでタイトルは「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法について (指針)」というものです。

こちらのポイントもエアロゾル感染予防を見据えたものです。
① 近づき過ぎないように注意しながら意識と呼吸をしているかの評価をする。
② 胸骨圧迫を始める前には傷病者の鼻と口にタオルやハンカチをかぶせる。
③ 大人には人工呼吸を行わない。子供は実施者に技能と意志があるなら人工呼吸を行う。ただし、ためらいがある場合は胸骨圧迫のみ行う。
やはり傷病者の鼻と口をガードすることが盛り込まれています。また、大人と子供で対応が異なりますが、これは大人では心臓の病気による心肺停止が多いのに対し、子供では窒息や溺水など呼吸原性(呼吸の問題が原因)の心肺停止が多いため、人工呼吸が心肺蘇生手技において重要であるため、やむを得ずこのような推奨をされているのだと考えられます。

今回のお話を聞いていると心停止患者への救助に対し消極的な気持ちが出てきてしまうかもしれませんが、最後に日本蘇生協議会の通告で勇気を持てる文章がありましたのでそれを引用させていただきたいと思います。
「わが国では、毎年7万人を超える心原性院外心停止が発生しており、市民救助者によるCPR(心肺蘇生)とAED を用いた電気ショックの実施は、院外心停止傷病者の社会復帰のために必要不可欠である。 市民救助者がCPRを行うことによって感染し死亡するリスクは、院外心停止傷病者を救命する効果と比較して極めて小さいと報告されている。感染対策に十分配慮した上で、市民による救助が推進されることを期待したい。」

本日は以上です。いつかの時のために家族の誰かのために心肺蘇生の方法を勉強された皆様、COVID-19の感染拡大により今まで以上に慎重にならなくてはいけない部分もありますが、是非学んだ知識・技術を生かし、救命の連鎖の1つ目の輪を担ってください。ドクターヘリ・ドクターカーで私たちがお迎えに行き、生まれた救命の連鎖をつなぎ、全力で救命に臨みます!
今後ともどうぞよろしくお願い致します。


2020年12月6日日曜日

院外広報誌「博愛」が「HAKUAI+(はくあい プラス)」に進化しました!

丸山です。
当院では年に3回程、院外の医療従事者・一般の方向けに院外広報誌を発行しているのをみなさんご存知でしょうか。
タイトルは「博愛」。1877年の西南戦争の時に設立された日本赤十字社の前身である「博愛社」に由来するもので、赤十字の精神を体現している単語でもあります。
そんな当院の院外広報誌も2000年に第1号が発行され、早20年。この度、「HAKUAI +」にリニューアルしました!平成から令和、旧病院から新病院へと私たちの環境が変化したことも踏まえ、「博愛」から「HAKUAI+」へと進化を遂げ、デジタル媒体メインの広報誌になりました。冊子での配布は患者さん向けに院内で数十部のみとし、職員への配布をなくすことでエコ・フレンドリーになり、職員が毎日目にする電子カルテのログイン画面(ポータルサイト)に掲載することでいつでもどこでも見られる環境になりました。  

この「HAKUAI+」ですが、一般の方々も当院ホームページからも閲覧することができます。当院ホームページを下にスクロールしていただくと「一般の方」と書いてあるボックスの中に、院外広報誌「HAKUAIプラス」と記載されているところがあるかと思います(写真②をご参照ください)。こちらをクリックしていただくと当院の最新版の院外広報誌が表示されます。またバックナンバーもございますので是非ご一読ください。

今回の特集は「コロナと戦う情報システム」です。
当院には情報システム課という部署があり、この部署の方々が病院情報システムを全て管轄しています!詳細は特集をご覧いただければと思いますが、当院では新病院への移転に当たりIT(information technology)を多く導入し、今も尚新しいシステムを導入し続けています。例えば、with コロナ時代の必須アイテム「オンライン会議システム」も今年の初めに導入されました。当院ではCisco Webex meetingというものを採用しています。それぞれが自身のパソコンから参加できるため、現場への滞在が不要になるだけでなく、広い会議室に広角カメラを設置し、院内の参加者においても3密を避けながら会議を行えるようになりました。

また、Cisco Jabberという電話アプリも導入されました。それぞれの医療スタッフが内線番号を持っていて電話ができる点は今まで同様ですが、さらにテレビ電話が可能となりコロナ診療の一助につながりました。ICUでは重症コロナ肺炎の患者さんの部屋(陰圧室)にテレビ電話を設置することで、陰圧室のスタッフと室外のスタッフが音だけでなく視覚的にも情報共有をすることが出来るようになり、感染予防の面で医療者の安全を担保しつつコミュニケーションエラーが減少することで患者さんの安全もより得られる環境になりました。また、このシステムを応用して、試用段階ではありますがドクターヘリ・ドクターカー活動も変化しました。今までドクターヘリの院外での診療内容は無線や電話で情報を得るしかなく、院内で患者さんを待っているスタッフ達は情報不足で想像を膨らませて準備をしなくてはならなかったり、ヘリドクターは情報を伝えるために一旦手を止めて電話しなくてはいけなかったりといった問題がありました。しかし、ヘリドクターが胸ポケットに院内専用iPhoneを入れてテレビ電話で動画を撮影しながら診療することで、リアルタイムで患者さんの様子を院内に伝えることが出来、さらにマイクもついているため診療を続けながら胸元に話しかければ院内で待機しているスタッフに申し送りが出来ます。
この他にも救急外来では超音波検査の画像データをWi-Fiを用いて無線で電子カルテに転送するシステム構築もされており、これらのシステム導入・機器設置・使用法の指導全てを一手に担っている「情報システム課」はまさに日々の診療における縁の下の力持ちです。救急科の(自称)IT担当の私は毎度たくさん相談に乗っていただいており、お忙しい中いつも誠実に対応してくださる情報システム課みなさんに感謝してもしきれません。

思わず特集の「情報システム課」の話題で盛り上がり過ぎてしまいましたが、この他にも「嚥下についてのお話」や「心臓血管麻酔認定施設についての話」など、毎回読者の皆様の健康につながる話題や当院の魅力についてお伝えしております。
進化した当院院外広報誌「HAKUAI+」を今後ともどうぞよろしくお願い致します!(^-^)/

 

写真①:「HAKUAI +」の表紙


写真②:前橋日赤HPの下の方に「HAKUAIプラス」の項目があるので是非ご覧ください

2020年11月22日日曜日

第48回日本救急医学会でポスター発表を行いました。

後期研修医の河内です。
第48回日本救急医学会でポスター発表をさせていただきました。私は重症の感染性心内膜炎について当院で経験した知見をまとめました。
コロナの影響でポスター発表者は全員Web参加になってしまい、とても残念です。

学会は自らの発表の場であると同時に、普段目にすることの出来ない他施設の取り組みや最新の知見を学ぶことの出来る貴重な場です。
勤務場所を離れずに通常業務の合間でも参加できることは有意義ですが、まぁ言ってしまえば遠くにお出かけしたいです。もちろん仕事として。

コロナが落ち着いて以前のような大盛況の学会が開催される日まで、Web開催でも積極的に参加をして経験を積んでいきたいと思います。



 

2020年11月14日土曜日

新型コロナウィルスとインフルエンザウィルス、どちらの方が手に残りやすいかご存知ですか?

丸山です。
 新型コロナウィルス感染の第3波がやってきましたが、そろそろインフルエンザの予防接種も始まる季節となりました。今回はコロナウィルス とインフルエンザウィルス関連の論文紹介です。タイトルは「Survival of SARS-CoV-2 and influenza virus on the human skin: Importance of hand hygiene in COVID-19」。京都府立医科大学の先生がヒトの皮膚に付着した新型コロナウィルス とインフルエンザウィルスの生存時間を調査した報告になります。
 大変興味深いテーマですね!とはいえ、生きている人の皮膚にコロナウィルスとインフルエンザウィルスをなすりつける訳にもいかないので、今回は死後約1日経過した解剖検体を用いて実験が行われました。ヒトの皮膚では新型コロナウィルス の生存時間が9.04時間、インフルエンザウィルスが1.82時間でした。コロナウィルス もインフルエンザウィルスも飛沫感染(くしゃみや咳など)が主な感染経路だと言われていますが、飛沫がついた手などを介して接触感染することも知られています。この皮膚付着後も長く生存できるという点が新型コロナウィルス が持つ強い感染拡散力の理由の1つなのかもしれません(あくまで個人の見解です)。この研究では同時にアルコール消毒の効果も検証しています。15秒間のエタノール(アルコール)に暴露することでどちらのウィルスも完全に不活化されたとのことでした。15秒というと手にアルコールを吹きかけてからゆっくり揉み込むくらいの時間になります。プラスチックや金属などでは新型コロナウィルス の生存時間は72時間(3日間)との報告もあります。日頃から行われているかと思いますが、外出して色々なものに触れて帰宅した後はしっかりアルコール消毒をすることがウィルス感染予防になります。アルコールがない場合は石鹸手洗いでも十分です。厚生労働省の新型コロナウィルスQ&Aでは石鹸で10秒揉み洗いをして流水で15秒すすぐとコロナウィルスは手洗い前の1/10,000まで数を減らすことができると述べられています。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行(ツインデミック)が心配される昨今ですが、既にコロナ流行中に冬を越した南半球の国ではインフルエンザは流行らず激減したとのことです。コロナウィルス 対策に国民全体が取り組んでいるため、インフルエンザなどその他のウィルス感染の予防にもなっているようです。本日の論文では新型コロナウィルス よりインフルエンザウィルスの方が皮膚での生存時間が短いとのことですので、皮膚についたインフルエンザウィルスもコロナ対策の手洗い・うがい、アルコール消毒でバッチリ退散ですね!