先日ブログでご紹介した新型コロナワクチン筋注方法について訂正があります

丸山です。
新年度となり、当院でも新型コロナワクチンの予防接種が始まりました。いつもの皮下注射のワクチンと比較すると、筋肉に注射することになるので疼痛は強いようです。女性の方はHPVワクチンの予防接種で筋肉注射を経験したことがあるかもしれません。私は4月中旬に予防接種が予定されているのですが初めての筋肉注射なので少しドキドキしています。
予防接種受ける側であると同時に予防接種を行う立場の方もいらっしゃるかと思います。そんな皆様の参考になるよう、2月27日にブログで日本プライマリ・ケア連合学会の「新型コロナワクチン筋注の方法とコツ」についてご紹介させていただきましたが、今回は訂正・追加情報がありご報告させていただきます。

3月15日に同学会より予防接種について新たな動画「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版」が公開されました。
前回の動画に対し各所から意見が寄せられ、それを踏まえより安全な筋注方法について模索されたそうです。
動画のURLはコチラ→ https://www.youtube.com/watch?v=tA96CA6fJv8
コチラのURL( https://www.pc-covid19.jp/ )が本サイトです。

変更点は以下の3点です。
① 「肩峰から下ろした垂線」と「前腋窩線の頂点と後腋窩線の頂点を結ぶ線」の交点に接種する。
② 被接種者は腰に手を当てず、腕を下ろす。
③ 接種者・被接種者共に腰掛ける(接種者は立たない)。

上記の方法で予防接種を行うことで、三角筋への筋肉注射で起こりうる合併症を減らすことが出来る可能性があります。具体的にはSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration:ワクチン接種に関連した肩関節障害)、腋窩神経障害、橈骨神経障害の3点が生じにくくなることが予想されます。

SIRVAは肩峰下滑液包という肩峰から3cm以内の部位に存在する袋のような部分に薬液が入ることで炎症を起こす状態です。以前提示されていた肩峰から3横指下では肩峰下滑液包に当たってしまう可能性があり、もう少し遠位で注射する必要があります。
腋窩神経は肩峰から4-9cmの高さで後ろから前に三角筋を横切るので、同様にそれより遠位で注射する方が安全です。
橈骨神経は通常三角筋の背側を走行しています。したがって腕を下ろしている分には敢えて背側から注射しなければ損傷するリスクは高くありません。しかし、腰に手を当てると肩関節が内旋して橈骨神経が腹側に移動してきます。こうなってしまうと今度は以前の接種部位より遠位に注射する場合、橈骨神経に当たってしまう恐れが出てきてしまいます。そこで腕を下ろしたまま予防接種を行うことが推奨されます。

しかしながら、三角筋への筋肉注射の合併症に関する報告は少なく、さらにこの新しい方法で合併症の頻度が減ったというエビデンスはまだ確立されていないため、前回紹介した接種方法全てが間違っているとは言えません。したがって、新たな注射方法はより安全である可能性が高いため推奨されるものの、新しい方法を導入する事で混乱するリスクも抱えているため各病院で見解を統一し事故が起こらないよう努める必要があると感じます。

新型コロナワクチンの普及はこのwithコロナ時代の打開につながる大事な一手であると確信していますが、世間的にはまだまだ不安が多いのも事実です。各医療機関・医療従事者の皆様にはより安全な手法を混乱が起こらないよう柔軟に取り入れてもらえたら幸いです。また、以前ブログで「誤情報や風評に振り回されないよう正しい情報を正しい場所から得ましょう」とお伝えしましたが、今回のように「正しいと思われる場所から仕入れた情報であっても絶対に正しいとは限らない」ということを私自身実感しました。精神的に疲弊しない範囲で適度に情報をアップデートしていただけたらと思います。私たちの情報発信がその一助になれば嬉しいです。


 

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