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令和元年台風19号災害の活動報告 『群馬県災害医療コーディネーター』

中村です。 10 月 12 日(土)に静岡県伊豆半島に上陸した台風 19 号は東海・関東・東北地方に甚大な被害をもたらし,現在でも復旧作業が続いています.群馬県では,死者 4 名を含む自宅の損壊・床上・床下浸水などの被害がありました.被害者の方のご冥福をお祈りいたします. 10 月 12 日(土) 15 時 30 分には,大雨特別警報が発表され,群馬県庁には災害対策本部が設置され,それと同時に県庁健康福祉部医務課には保健医療調整本部が設置されました. 中村は‟群馬県災害医療コーディネーター”として医務課の方々と電話で調整を行っておりました. 18 時 45 分,当院町田医師から『富岡で土砂崩れが発生し,人的被害が出ているかもしれない』というテレビからの情報を提供して頂きました.この時点で,私は,県庁に入ることとしました.医療的な観点で県全体の被害状況を確認し対策を立てなければならないと判断し, 19 時 30 分に県庁医務課に到着し,県職員の方々に状況を伺いました. その後, 20 時 25 分,前橋赤十字病院から看護師 1 名,主事 1 名のコーディネートチームが到着時 3 名で被害状況の収集や情報の共有を行いました.夜間であり,情報が少ない中,医療者の安全性を念頭におき医療需要の有無を検討しました. 翌日, 13 日(日)は,栃木県より DMAT 派遣依頼があったため,東毛地区の災害拠点病院を中心に出動して頂きました. この経験での教訓は,自然災害であるため防ぐことは出来ないかもしれないが,『災害医療コーディネーターとして,人的被害が出てからの対応では無く,特別警報が発表された時点での積極的な対応を行うべきである』という事です.   自然災害の多くは,ライフラインに大きな影響を与え,当初,人的被害が少なくても長期間の医療および保健対応が必要となります.最終的に,被災者の Health を維持するには,医療機関だけではなく,消防だけでなく警察や自治体,医師会との連携が必要となります.それには,災害が起きる前からの備え,起きる直前の戦略・戦術を共有することが大事であると考えます.

「2019年度第3回群馬県ドクターヘリ症例検討会」を開催しました。

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町田です。 11月も間もなく終わりですね。まさか明後日から師走とは! 寒さが一気に厳しくなりインフルエンザの爆発的流行が来ないかどうかビクビクしていく日々です。 11月26日に今年度3回目の「群馬県ドクターヘリ症例検討会」を開催しました。 今回は7-9月の3か月の活動の中から5例を抽出し、それぞれの活動中の課題や共有すべきことについてディスカッションを行いました。 今回も150名近い関係者の方々に集まっていただき心より感謝いたします。 事案の詳細はここでは書きませんが、それぞれの事案のテーマは以下の通りです。 「吐血によるショックで現場で気管挿管による確実な気道確保を要した事案」 「 腹部を自傷した鋭的外傷事案」 「重症熱中症に対してショックに対する心停止前輸液を行った事案」 「医療コマンダーが全体像を把握できなかった多数傷病者事案」 「現場医療スタッフ派遣を考慮すべき事案」   上記の内容はどれも初めて取り上げる内容ではありません。しかし繰り返し行うことが大切な内容です。 あらためて 上記のテーマをそれぞれ言葉をわかりやすく直して書くと、 「 医療者が現場で高度の手技を行う判断(本当に現場でやらなくてはいけないのか?)」 「鈍的損傷と鋭的損傷の対応の違い(刺し傷は急いで手術室に向かえばほぼ助かる!)」 「ショックと高体温に対して現場で救急隊ができること(救急隊でできる治療は現場からどんどん行いましょう!)」 「“毎回恒例”多数傷病者対応のポイント(傷病者数とトリアージ区分をヘリに早く伝えて消防と医療の戦略のすり合わせをすぐに開始せよ!) 」 「現場医療スタッフ派遣の判断(消防と医療でイメージ共有して派遣の適否を判断せよ!)」 といった感じです。 検証のために一事案一事案をきちんと振り返るためには、このような症例検討会ではなく医療スタッフが各消防に足を運んで徹底的に行わないといけません。とはいえこの症例検討会には多くの消防・医療関係者が集まっていただいており、この会で重視していることは「消防と医療の活動の理解とイメージの共有」です。 マニュアルや約束を作ったところでそれぞれの事案ですべてその範囲内で活動できるわけではなく、ほとんどすべての事案においてプラスアルファもしくは全く異な

“これからのドクターヘリー課題と解決策ー”~「HEM-Net創立20周年記念シンポジウム」参加報告~

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町田です。 11月25日に東京の霞が関ビルディング35階にある東海大学校友会館で開催された「HEM-Net創立20周年記念シンポジウム」にパネリストとして参加してきました。 HEM-Netとは“認定NPO法人 救急ヘリ病院ネットワーク”のことで、これからもドクターヘリの全国配備に尽力をしていただき、ここ最近は「D-call Net」や「ドローンとドクターヘリとのコラボ」など新しい取り組みを始めています。 今回のパネルディスカッションは「これからのドクターヘリー問題と解決策ー」というテーマで、以下のメンバーがそれぞれの得意(?)分野で発表を行いました。 <夜間運航> ・全日本航空事業連合会ドクターヘリ分科会 辻 康二 氏 「ドクターヘリ夜間運航に向けてーこうすれば飛べます!」 ・航空自衛隊航空救難団司令部 西村 修 氏 「航空自衛隊航空救難団の立場から」 <地域医療> ・宮崎大学医学部附属病院救命救急センター 金丸 勝弘 氏 「Doc-Heli for All, All for MIYAZAKI」 <周産期医療> ・長崎みなとメディカルセンター地域周産期母子医療センター 平川 英司 氏 「ドクターヘリを活用した周産期母子医療」 <広域運用> ・前橋赤十字病院高度救命救急センター 町田 浩志 「空から見えない県境との戦い~首都直下地震を見据えたドクターヘリ広域連携に向けて~」 <高度新技術の活用> ・日本医科大学千葉北総病院救命救急センター 本村 友一 氏 「救急・災害時のドローンの利活用と課題と展望」 ・株式会社ウェザーニューズ 高森 美枝 氏 「ドクターヘリ安全運航の為のニューテクノロジー」 何度目か忘れるほど同じ舞台に立つことの多い本村先生(写真右)とともに・・・ 災害時のドクターヘリ運用に関する盟友(戦友)です。 そして同じく長いことお世話になっているHEM-Net事務局の小山さん(写真中央)! 僕の発表は災害時のドクターヘリの連携について、今一度原点に立ち返り被災地外のドクターヘリが困っている被災地のためにすぐに動けるような広域連携を平時から築くことの意味について話をさせていただきました。 1998年にドイツで発生した高速列車の脱線事故では「発災直後よりドイツ全土から30機近くの医療ヘリが

事故にあった子供たちを助けたい!~「ITLS Pediatric Course」指導報告~

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町田です。 9月に北海道釧路市で開催された「ITLS Advanced Course」について土手先生から本ブログで紹介させていただきました(  https://drheli-gunma.blogspot.com/2019/10/itls-advanced-course.html  )。そのコースの懇親会中に「そういえば北海道でしばらく小児外傷のコースやってないですよね・・・」とちょっとつぶやいてしまったら、あっという間に2か月後に「ITLS Pediatric Course」が北海道帯広市で開催されることとなり、今週末はそのコースにもインストラクターとして参加させていただいたので報告します。 「ITLS Pediatric Course」とは、“ 外傷を負った子供のかけがえのない命を守るため、小児に特化した外傷初療を学ぶコースで、小児に対する正しい観察の方法や観察手順、小児の外傷処置や固定方法を学ぶ(ITLS日本支部ホームページより) ”です。 日本には救急医療や外傷診療に関する様々な教育・研修コースがありますが、実は小児の外傷患者に関わるコースはほとんどなく、僕自身も平時の病院前診療や救急医療で小児の重症外傷患者や虐待を受けている児の対応にここのコースが学んだことがとても役立っており、そのためにこのコースの指導者として定期的にコース参加して知識のブラッシュアップを行っています。 今回の会場は帯広厚生病院でした。 2年前にJA北海道厚生連の初期研修医セミナーに講演させていただきましたが、実は当院と同じ時期に新病院に移転していて、今回はその新病院でのコース開催となりました。 JA北海道厚生連帯広厚生病院(救命救急センター側から)。 土手先生が初期研修を受けた病院です! 日本の食糧自給を支えている地域の病院ということもあって、コース会場の壁に十勝名物の小豆や大豆が飾ってあったのが印象的でした。 小児の重症外傷は成人に比べて頻度がとても少ないです。そのために実際に対応する救急隊員や医療スタッフが苦手意識を持っている場合が多いのが現状です。 小児の場合は成人よりももともとが元気であるため、病院前や病院での初期対応がしっかり行われればどんな重症患者さんであっても、奇跡的に元気になってくれることがあります。しかしながら体が小さいため