『スピード』、『コミュニケーション』、『オールぐんま』~群馬県ドクターヘリ症例検討会~

5月20日に当院において『平成26年度第1回群馬県ドクターヘリ症例検討会』が開催されました。

運航開始当時より行われている本会も19回目を迎え、症例検討の内容も傷病者の病態や現場活動の内容だけではなく、通信指令課の判断、重複要請時の対応、さらにキャンセルの判断など、内容もより高度になってきました。
昨日も消防関係者、県庁関係者、そして搬送先病院の方々など多くの方に参加いただき、活発なご意見を頂きディスカッションもいつも以上に盛り上がったように感じます。
 
 
☆平成26年度第1回(通算19回)群馬県ドクターヘリ症例検討会☆

①平成25年度実績報告

平成25年度も要請・出動数とも前年度より増加しています。
しかしここ5ヶ月は前年度比でほぼ横ばい~減少となっています。
現在の要請・出動数が当県の妥当な数なのか少ないのか多いのかを検証していきます。

消防覚知からドクターヘリ要請までの県全体の平均時間は30分を切るようになりました!
しかし病着まではまだ60分を超えています。
着陸してから傷病者接触までの時間短縮、よりスピーディーな診療が必要です。


②症例検討

・覚知要請すべき複数傷病者事案
キーワード方式を採用していないくてもやはり重症患者発生を示唆する言葉を意識して!
各消防本部ごとに各地域に合わせた危険性をピックアップしておく。
 
・全事案に向けて出動中に次事案の要請が入り、フライトドクター判断で次要請に対応した事案
同時要請の際の判断する要素が時と場合により変化することがある。
目の前に患者さんがいる救急隊とのコミュニケーションをつねに意識して活動を!
 
・外傷と熱傷の混在した症例
熱傷傷病者は搬送先病院が3次病院に限られてくる。
現場での救急隊が処置を行うか困ったときは積極的にドクターヘリに投げかけを!
 
・高崎ドクターからからドクターヘリに引き継いだ周産期のCPA症例
ドクターヘリが着陸した後のコミュニケーション手段は?あえて着陸しないこともあり!
ドクターカーとドクターヘリのより有効な共存を考えていく必要がある。
 
・RPの安全確保に時間を要した事案
ランデブーポイントはまだまだ足りないのでもっと増やす必要がある。
一番近い場所という考え方から、最も早く傷病者に接触できる場所という考え方へ!
担当したフライトドクターから状況説明や医学的アドバイスを行いました。
 
 
③特別講演
桐生市消防本部『ドクターヘリ要請とキャンセルについて』
 
桐生市消防本部警防課よりドクターヘリでキャンセルになった症例について、そのキャンセルが本当に妥当であったか、搬送先病院や活動した隊員へのアンケートをもとに報告していただきました。
実際に「キャンセルの中に重症例があった」、「キャンセル理由が不適当であった」など、なかなか負の部分を報告することは勇気がいることだと思いますが、運航当初より高いレベルで活動していただいている消防本部からの報告に会場にいた参加者もとても真剣に聞いていました。
ドクターヘリが医療ヘリであることより、キャンセルについてもしっかり根拠を示せるようになるとアンダートリアージが減るとおもわれます。(もちろん医療側が根拠を求めすぎてキャンセルのハードルを上げないように配慮することも必要です。)
 
 
 
群馬県ドクターヘリは関係機関のご協力のおかげで件数は年々伸びてきています。そしてようやくですが少しずつ活動時間も短くなってきています。昨年の日本航空医療学会で発表させていただきましたが、消防覚知から傷病者接触が早いほど生存率が高くなっている成績も出ています。そこで今回の症例検討会では、さらに時間を意識した活動をテーマに挙げました。まさに『スピード』です。
そのスピードを得るためにはスムーズな連携が必要です。そのためには消防と医療の『コミュニケーション』をもっと密にして、それが消防の管轄やメディカルコントロール協議会の枠は関係なく、『オールぐんま』で挑むことで最終的に群馬県どこにいてもレベルの高い救急医療を提供できるための方法だと考えています。
昨日の症例検討会では、この『スピード』、 『コミュニケーション』、『オールぐんま』という言葉が、発表の中にもフロアからの発言に中にもたくさん飛び交っていました。少なくとも症例検討会の会場内は一体感にあふれていました!
 
先日の基地病院スタッフ会議で提案した「消防覚知から傷病者接触まで30分以内(30分ルール)』『消防覚知から決定的治療開始まで60分以内(60分ルール)」を、ドクターヘリだけではなく県全体の救急医療システムの中で達成できる日を目指して行こうと思います。


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