“ICUでの早期リハビリテーション”~東京女子医科大学 小谷透先生ご講演~
こんにちは、堀口です。
2月25日に、当院博愛館で第89回地域連携学術講演会を開催いたしました。東京女子医科大学麻酔科学教室の小谷 透先生をお招きしてご講演いただきました。
続いて小谷先生に、「ICUでの早期リハビリテーションについて~日本におけるEarly Mobilization (EM)の夜明け」と題して特別講演をしていただきました。
早期離床(EM)しない時代の問題点として、ICU治療を要するような患者は生き延びても、体重が減っていたり復職できていないという問題がありました。このようなlCU-Acquired Weakness (ICU-AW)と呼ばれる状態になってしまう要因には、長期人工呼吸、多臓器不全、栄養状態などいろんな要素がありますが、その中でも不動状態にすることの影響は大きく、筋力が1日1~1.5%低下することからもその重大さが伺えます。
小谷先生の病院では看護師、理学療法士など多職種からなるMobilization Team (MT)を10年近く前から導入され、この問題に取り組んできておられます。退院後のQOLを改善するために、先生は①浅鎮静の励行②せん妄の予防③早期リハビリテーション(EM)の実施をポイントとして挙げられました。
①②については、PADガイドラインに基づいた患者状態の評価と治療が勧められます。当院ICUでも導入していますが、痛み、興奮、せん妄を評価して、投薬をコントロールするものです。鎮静やせん妄を単に数値化するだけでは治療に繋がらないこともありますので、小谷先生はスケールとプロトコールを使用して鎮静のコントロールを行うEarly Goal-Directed Sedation (EGDS)の導入を提唱されていました。RASSで鎮静具合を評価し、最低限のデクスメデトミジンとプロポフォールで浅鎮静に保つ方法です。深鎮静を避けて浅鎮静とするためには分かりやすくて有用な方法だと思いました。
③についてはその壁として、安全性への懸念など教育に関する問題からくる知識の欠如、量的質的なスタッフの不足などが挙げられます。このようなバリアを取り除くためには、離床チームの編成と教育、目標の明確化、EMをやっても事故抜管などの有害事象はほとんどなく安全に行えるということの啓蒙、全スタッフがEMは有益であると心から信じること、成功体験の共有などが重要であるというお話でした。
このような取り組みは、それまでの文化を変えること=Changing Cultureですので大変な苦労を伴うことだったと思います。実際に、東京女子医大で離床チームへのリハビリテーション依頼件数は当初の2年間はほとんど増えなかったそうです。Change Cultureするには5年くらいは腰を落ち着けて取り組む必要がありそうです。
劉先生は今月、日米両国の集中治療学会に参加されました。日本の学会では離床の有益性に関する演題が増えてきており、特別講演の副題通り「夜明け」状態のようです。一方アメリカでは今や早期離床するのは当たり前で、むしろどうやったら上手く離床できるかに重点が移ってきているそうです。この夏には、日本国内の複数の病院が連携して、早期離床に関するデータを共有する試みも動き出しそうです。これからの発展に注目していきたいと思います。
2月25日に、当院博愛館で第89回地域連携学術講演会を開催いたしました。東京女子医科大学麻酔科学教室の小谷 透先生をお招きしてご講演いただきました。
東京女子医科大学 麻酔科学教室 准教授 小谷 透 先生 |
小谷先生のお話の前に一般講演として、当科の劉啓文先生から「敗血症性ショックにおけるリコモジュリンと早期離床の役割」と題して、当院のICUにおける早期離床の取り組みを報告いたしました。
当科では昨年より「前橋早期離床プロトコール」と名付け、原則的にICUに入室した全症例で患者状態に応じて医師主導のリハビリテーションを進めております。早期に離床することで、単に生存して退院するのではなく、日常生活を自立しておくれるQOLの高い生存退院を目指しております。発表では実例を交えて、その実際を紹介してもらいました。
続いて小谷先生に、「ICUでの早期リハビリテーションについて~日本におけるEarly Mobilization (EM)の夜明け」と題して特別講演をしていただきました。
早期離床(EM)しない時代の問題点として、ICU治療を要するような患者は生き延びても、体重が減っていたり復職できていないという問題がありました。このようなlCU-Acquired Weakness (ICU-AW)と呼ばれる状態になってしまう要因には、長期人工呼吸、多臓器不全、栄養状態などいろんな要素がありますが、その中でも不動状態にすることの影響は大きく、筋力が1日1~1.5%低下することからもその重大さが伺えます。
小谷先生の病院では看護師、理学療法士など多職種からなるMobilization Team (MT)を10年近く前から導入され、この問題に取り組んできておられます。退院後のQOLを改善するために、先生は①浅鎮静の励行②せん妄の予防③早期リハビリテーション(EM)の実施をポイントとして挙げられました。
①②については、PADガイドラインに基づいた患者状態の評価と治療が勧められます。当院ICUでも導入していますが、痛み、興奮、せん妄を評価して、投薬をコントロールするものです。鎮静やせん妄を単に数値化するだけでは治療に繋がらないこともありますので、小谷先生はスケールとプロトコールを使用して鎮静のコントロールを行うEarly Goal-Directed Sedation (EGDS)の導入を提唱されていました。RASSで鎮静具合を評価し、最低限のデクスメデトミジンとプロポフォールで浅鎮静に保つ方法です。深鎮静を避けて浅鎮静とするためには分かりやすくて有用な方法だと思いました。
③についてはその壁として、安全性への懸念など教育に関する問題からくる知識の欠如、量的質的なスタッフの不足などが挙げられます。このようなバリアを取り除くためには、離床チームの編成と教育、目標の明確化、EMをやっても事故抜管などの有害事象はほとんどなく安全に行えるということの啓蒙、全スタッフがEMは有益であると心から信じること、成功体験の共有などが重要であるというお話でした。
質問をするリハビリテーション科部長 大竹先生! |
このような取り組みは、それまでの文化を変えること=Changing Cultureですので大変な苦労を伴うことだったと思います。実際に、東京女子医大で離床チームへのリハビリテーション依頼件数は当初の2年間はほとんど増えなかったそうです。Change Cultureするには5年くらいは腰を落ち着けて取り組む必要がありそうです。
劉先生は今月、日米両国の集中治療学会に参加されました。日本の学会では離床の有益性に関する演題が増えてきており、特別講演の副題通り「夜明け」状態のようです。一方アメリカでは今や早期離床するのは当たり前で、むしろどうやったら上手く離床できるかに重点が移ってきているそうです。この夏には、日本国内の複数の病院が連携して、早期離床に関するデータを共有する試みも動き出しそうです。これからの発展に注目していきたいと思います。
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