実り多きシミュレーション!~群馬県ドクターヘリ『AACN通報訓練』の報告~


町田です。
 
すでに15年前より一部の高級車にAutomatic Crash Notification(ACN:事故自動通報システム)が導入されています。これはACN搭載車のエアバッグが開くと自動的にコールセンター(HELPNET:㈱日本緊急通報サービス)につながり、運転手の反応がなかったり会話の内容から必要であればすぐにHELPNETから消防本部に救急要請するシステムです。
これをさらに発展させ事故が起こると「位置情報」に加えて「運転席・助手席の予想死亡・重症率」がドクターヘリ基地病院においてあるタブレット端末に飛んできて、その情報をもとにドクターヘリ出動を目指すAdanced ACN(AACN:先進事故自動通報システム)がこの秋より大衆車にも導入されます。
☆AACNの詳細については、
 
AACNの全国展開に向けてこの秋から全国8基地病院で試行運用が行われますが、その1つに群馬県が選抜されたのにあたって、群馬県庁主催・HEM-Net全面協力のもと『群馬県ドクターヘリ通報訓練』を行いました。
当県より先に千葉県2基地および福島県ですでにドクターヘリを用いた実機訓練を行っており、そこですでに「AACNによりドクターヘリ早期要請、医療チームの傷病者接触時間短縮」の証明がされています。しかし群馬県ドクターヘリ運航要領では、現場救急の際に「消防の要請がないと出動できない」「消防の安全確保がないと着陸できない」というルールが決まっています。そうすると自然と「群馬のように飛行時間が短い県で早期要請に消防の安全確保がついてこれるか?」、また「本当にAACNの情報で直感的にヘリ要請をかけられるか?」という疑問がわいてきます。
 
これらの疑問を消防と基地病院が一体となって解決するために、今回の訓練はあえて関係者を一堂に一つの会場に集めて行いました。基地病院と消防本部の動きを同時進行に行い、さらに現場の状況は地図上で共有しながら、問題点を1つ1つピックアップしながらディスカッションを行いました。
AACN関係者、群馬県警・各消防本部、埼玉・栃木・茨城県ドクターヘリ関係者の
方々にお集まりいただきました。マスコミ各社の方も興味深く取材されていました。

 

実際に事故現場を設定して、模擬事故を発生させました。(今回はTOYOTA、HONDAの2社にご協力いただきました。)


事故発生から1分後に事故情報(車両種類、事故現場、予想重症・死亡率)が、基地病院に配布されるタブレット端末に飛んできました。

 
消防本部の通信指令課にHELPNETから救急隊要請の連絡が来たのはその1分後・・・この時点ですでにタイムラグが発生、しかも消防側には予想重症・死亡率の情報は届きません。そのためにドクターヘリ要請の判断をするために、HELPNETオペレーターにさらなる情報収集という作業が入りました。その間約1,2分・・・しかもオペレーターなので、そこまで詳細情報はわからず・・・
ここでAACNの第一報だけで通信指令課ですぐにドクターヘリ要請ができるわけではないことが
判明しました。しかしこの時点で基地病院はすでに傷病者の重症度もわかっているので、その情報を基地病院から消防本部へ共有するとともに消防にヘリ要請を依頼することが重要であることがわかりました。
 


ヘリ要請後は実際にヘリの現場上空到達時間や消防のランデブーポイント安全確保完了時間をシミュレートしながら、いかに早くヘリを着陸させ傷病者のもとに医療チームを届けるか、高速道路での事故も含めて2事案で検証を行い、実際にAACNにより現時点での平均時系列と比較して早期医療接触ができることを証明しました。

 
通報訓練中そして訓練後のディスカッションでは消防本部の方からは、要請までの手順、そしてランデブーポイントの設定に関する様々なご意見を頂きました。また警察の方からは「いち早い安全確保のために機動力のあるパトカーでも白バイでもなんでも出しますよ!」という力強いお言葉を頂きました。特に交通事故の関しては警察との強固な連携が絶対に必要です。
また今回も先日のドクターヘリ症例検討会に引き続き隣県(栃木県、埼玉県)そして茨城県ドクターヘリ関係者の方々にもご参加いただき、ディスカッションを大いにもりあげていただいたとともにAACNの今後の全国展開に向けての貴重なご意見もいただき、参加者全員にとってとても実り多き会になりました。
 
 
今回のようにいろいろな場所で同時進行で行われることを一か所でみられるようにして、時間通り進めるのではなく全員で一緒に考えながら進めていくシミュレーションがドクターヘリに関わる訓練でもなかなか有用であるように感じました。
この知識の共有をもとに、今後実機を用いた訓練も検討していきたいと思います。


コメント

  1. という事は、県警本部なり所轄署にも、このシステムを導入した方が良いという事になりますよね?
    警察もヘリを導入していますし、異動はあるにしても警察も地域密着。
    そうすれば、土地状況もわかるので、現場直近にヘリが着陸できる可能性もありますよね?

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    1. コメントいただきありがとうございます。まさにご指摘いただいた通りです。
      AACN搭載車を増やしていくことも大切ですが、事故対応に関わる全ての機関が情報を受信できるようにすることで、より早い対応が可能になると思います。警察、消防、そして救急病院に配備できればよいと思いますが、予算などいろいろな問題がまるあるようです。しかし確実に全国展開に向けて進んでいるようなので、今後の展開に期待しましょう!

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