もし群馬県が被災したら?~阪神淡路大震災から22年~

阪神淡路大震災から22年がたちました。
この震災の対応から多くのことを学び日本の災害医療は大きな発展をしてきました。いまでは災害時にDMATやドクターヘリは欠かせないものになっていますが、その当時の現場で戦った医療関係者の皆様のご苦労ははかり知ることができません。その方々の思いを引き継ぐべくこれからも日々努力していく次第です。


当院では院外向けに「博愛」という広報誌を定期発行しています。
時々当科にも原稿の依頼が来ますが、昨年末に中村センター長より「群馬で災害が起こったときにどのように対応するか」とく記事を書きました。今日この日に改めて自分たちがきちんと活動できるかどうか振り返る意味を込めてその記事を紹介します。




~~院外広報誌「博愛(平成28年12月発行)」より~~

『熊本地震の救護活動から見えてきたもの』
-もし群馬県が被災したら? 前橋赤十字病院としての役割と課題-

南海トラフ地震は,内閣府より防災対策推進基本計画が示されている.「具体的な応急対策活動に関する計画の概要」では,熊本県は「被害が想定される地域」に分類されているが,大分県や宮崎県の被害が甚大であるため,政府総合防災訓練では熊本県は九州の統括的な立場で被災者や傷病者の受け入れを行う想定とされていた.そんな中,2016414日,2126分,熊本県を震源とするマグネチュード6.5,最大震度7の地震が,16日,125分には本震となるマグニチュード7.3の地震が発生し,死者133人(災害関連死を含む)に及ぶ甚大な被害をもたらした(2016114日現在).

まさにこの状態は群馬県と同じである.南海トラフ地震の防災対策推進基本計画で,群馬県は「被害が想定されない地域」とされている.では,群馬県では災害が起きないのか?実は,群馬県にも3つの断層がある.関東平野北西縁断層,太田断層,片品川左岸断層である.最も大きな被害をもたらすものは,関東平野北西縁断層であり,最大でマグネチュード8.1,死者数3,000人,負傷者数18,000人と想定されている.もし,この地震が起きたら,当院は何をしなければならないのかを考えておかなければならない.

まず,院内に院長を本部長とした災害対策本部を立ち上げることが先決で,次に,入院されている患者や時間によっては外来受診をされている方々の安全を確保し,職員の安否,病院の被災状況を確認しなければならない.当然,病院には救急車だけでなく,個人の車等でも患者が押し寄せる.院内を災害モードに切り替え,新たに診療部門を設置し,前橋保健医療圏の患者の受け入れや治療を行わなければならない.

また,前橋市の地域災害医療コーディネーターとして保健所と連携し前橋保健医療圏の状況を把握しなければならない.

さらに,当院は群馬県の基幹災害拠点病院である.そのため,前橋保健医療圏だけでなく群馬県全体の被害状況を把握し,医療体制を構築する必要がある.被害想定を考えると,群馬県内だけの対応では困難であるため,県は非被災県に応援を依頼しなくてはならないし,国に対して広域医療搬送計画の実施を依頼しなくてはならないかもしれない.この判断のサポートを群馬県災害医療コーディネーターもしくはサブコーディネーターとして行う必要がある.

非被災県に応援を依頼すると,多数の救護班が参集する.その救護班の調整を行うのは県庁内の派遣調整本部であり,災害の超急性期はDMAT調整本部が担うことになるだろう.当然,全国赤十字救護班も参集する.その救護班をまとめるのは日赤災害医療コーディネーターの役割である.

非被災県からの応援により,徐々に役割を交代することが可能であるが,災害超急性期の医療は,すべての役割を前橋赤十字病院が担わなければならないかもしれない.

また,すべての災害拠点病院が機能して,各医療圏を統括することが出来れば良いが,今回の熊本地震のように病院機能が著しく低下してしまう場合や,病院自体のライフラインが壊滅し病院避難を必要とする病院が出るかもしれない.そのような場合には,群馬県が中心となり病院の支援や避難を行わなければならない.

明日,災害が起きるかもしれない.医師会や他の災害拠点病院,救援に来ていただいた救護班と協力し,地域医療圏や群馬県全体を統括出来る人材の育成が当院の最も重要な課題であると考える.

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