消防も医療もレベルアップを図るべし!~患者さんにとってベストな医療を提供するために~

 
群馬県救急搬送支援システムをみると、搬送先となる病院の上に“ドクターヘリ、防災ヘリ(ドクターヘリ的運用)、ドクターカー高崎、ドクターカー前橋(試行事業)”が並んでいます。そうです、患者さんとより速く医療が接触するために医師、看護師を病院前に引っ張り出す、いわゆる『モバイルER』ともいえる手段が増えてきました。とある日の様子を見ると、このようにドクターヘリ、ドクターカー高崎、ドクターカー前橋が出動していました。

しかしながら気を付ければいけないことは、『量が増えると質が落ちる危険性がある』ということです。それを消防も医療も常に意識しながらの活動しなくてはいけません。

消防がドクターヘリやドクターカーに期待していることは、迅速でレベルの高い現場での評価と処置です。重症度が高くバイタルサインが不安定な患者への対応は当たり前として、まだバイタルサインが不安定でなくても今後間違いなく悪化すると予想さえる人に早期介入し、出来るだけ状態を悪化させずに根治治療ができる病院に搬送することが大切になります。
例えば気胸を合併した患者さんがいて、今はまだなんとか呼吸が保たれているけどいつでも悪化する可能性が高いときに、『現場滞在を延長して胸腔ドレーンを留置する決断と2分以内に実行できるスキル』が伴っていないといけません。現場滞在時間はできるだけ短くしながら、診察をしながらの様々な決断と必要時の迅速な高度の処置を行えることを当たり前であることが、病院前にでるスタッフが消防に求められることであり、さらに患者さんにとって当たり前であると感じています。

医療も消防に求めていることがあります。患者さんが発生して真っ先に対応するのは救急隊です。よっぽどの特例を除いてドクターヘリやドクターカーが先に接触することは群馬県では考えにくいです。医師が患者に接触するまでの数分の救急隊の評価とそれに対する処置で助かる命もたくさんあります。ドクターヘリやドクターカーが来るということで、決して現場での評価や処置をおろそかにしてはいけません。

消防と医療がランデブーポイントでお互いの活動をきちんと評価して、マイナス点に関しては建設的にフィードバックできる関係が必要です。


当院ではフライトドクターやフライトナースになるために数年かかります。それは現場に出た時に患者さんに常にベストな対応ができるようになるためには、それだけの時間を必要とするからです。もちろん全国のドクターヘリの活動を知っているわけではないので群馬のレベルが確実に高いとは決して思っていません。でも最低でも全国のプレホスピタル活動の足を引っ張らないように、自らに厳しく基準を設けています。

最近ちょっと気になることがあって、あえて今日はこのような内容にしてしまいました。現場と根治治療を行う病院までの搬送の間にドクターヘリやドクターカーを挟むことの意味を改めて考えなくてはいけません。救急隊は運び屋さんではありません。そしてドクターヘリやドクターカーも運び屋さんではありません。救急隊の最初の判断で大きく方針が変わる可能性があるので、限られた時間の中でも持てるスキルをきちんと発揮してほしいのです。そしてドクターヘリやドクターカーもあくまで救命センターの初療室と同じレベルであることが消防や一般市民からのリクエストでしょう。

現場でもがき苦しんでいる患者さんに最善の治療を提供できるために、消防も医療ももっとレベルアップを図らなくてはいけない感じてしまった今日この頃です。

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