ドクターヘリの動きを把握せよ!~ドクターヘリ運航動態システム~

町田です。

一昨日に群馬県ドクターヘリは運航開始から3000件の要請を頂きました。そのうち実際に出動できたのは2309件で、約700件は未出動になっています。今年度もあと5件で要請が1000件になりますが、約1/4弱が未出動で約90件が重複要請で対応不能となっています。未出動の原因として天候不良や時間外に関しては仕方がないこともありますが、重複要請による未出動をもう少し減らすための次なる現場医療スタッフ派遣手段を基地病院も消防本部ももっと考えなくてはいけませんね。


昨日当院では密かなミッションが行われていました。
ミッションの名前は『ドクターヘリ運航動態システムに関する研究』です。災害医療センターの小井土先生が主任研究者である「東日本大震災における疾病構造と死因に関する研究」のなかの一つで、日本医科大学千葉北総病院の松本先生を中心に行っている研究です。災害時のドクターヘリ運航調整を担当している当院ももちろん本研究に協力し、昨日は中村先生を中心にJAXAやweathernewsの担当者も当院に集合しました。
基地病院、航空会社、JAXA、weathernewsのスタッフが集まりました。

実際にヘリに専用の機械を搭載してされた機体を用いて(群馬県はまだ搭載されていません・・・)、『D-NET』(JAXA)と『FOSTER-GA』(weathernews)の2種類のモニタリングでヘリの動態を監視しました。
昨年9月1日に四国で行われた内閣府広域医療搬送実動訓練ですでにD-NETはでも使用され、各県庁、高松空港、松山空港でヘリの動きを監視することができました。
また先日も当院でFOSTER-GAによる訓練が行われ、ちょうどその機会を搭載している但馬ドクターヘリの出動をリアルタイムに把握することができました。基地病院に帰還する頃に雨雲がちょうどかかっていることを把握することができ、但馬救命センターに確認の電話をしたところ小林センター長自ら「今帰って来たよ~!でも雨雲がかかってきたから格納中です。」とご報告を頂きました。
D-NET by JAXA
FOSTER-GA by weathernews

東日本大震災におけるドクターヘリ活動の大きな問題点として、ヘリと各本部との通信の確立が難しかったことが挙げられます。石巻市立病院の患者避難活動でも最大8機のドクターヘリが活動しましたが、実際にドクターヘリ運航調整本部のあった福島県立医大CS室ではヘリの動きがわからず、石巻市立病院でもいつヘリが来るのか把握できないままの活動になりました。運航会社の皆さんのプロフェッショナルな活動のおかげで、各地で無事故かつ有効な活動ができましたが、本当に安全かつ効率的なヘリの采配をするにはこのような一括にヘリの動きを把握できるシステムが必要になってくると考えられます。
 東日本大震災では、ホワイトボードと地図を駆使してヘリの動きをフォローしていました。

 昨年度の9.1訓練ではD-NETを試用しました。
 
このようなシステムは災害時以外にも様々な可能性があると感じています。
ドクターヘリが全国的に配備が広がり、各地域で県境を越えた活動ができるように広域連携も進んできています。今の時点では「自県のヘリが出動できなければ隣県のヘリを要請してよい」という連携が多いようですが(北関東区域連携もそのようになっています)、患者さんを中心に考えれば発生地点に最も早く駆けつけられるヘリを要請するのが最も有効的です。
例えば、各道府県のドクターヘリが県境関係なく活動できるような仕組みができていて(これが一番大変だと思いますが)、各消防本部の通信指令課にこのようなドクターヘリ運航動態システムが入っていれば、ドクターヘリが必要時にそのモニタリングから最も早く到達できるヘリを要請することが簡単にできると思います。普段要請しているヘリが他事案に出動していたとしても、その様子がリアルタイムに把握できるので、現場に向かっているならすぐに次に近いヘリを要請したり、すでに病院に向けて搬送していたらそのヘリに続けて要請したりするなど、いちいち電話で確認しなくても要請する側の判断で決められる可能性が出てきます。このようにして近隣ヘリ同士でカバーし合えると、最初に書いた重複要請により対応できなかった事案を減らすことも可能でしょう。

災害時には活動の支障となるいろいろな障壁が次々と襲ってきます。だからこそ災害時のみではなく平時より活用できるシステムを構築して、災害時はその応用として活用できればものすごく良いシステムが出来上がるような予感がします。
今回はまだ研究に協力している段階ですが、ものすごい可能性を感じてわくわくしながら画面をのぞきこんでいました。

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