1“秒”でも早く!(群馬県ドクターヘリ5月実績速報付)

集中治療科・救急科&フライトドクターの町田です。

最近なかなか太陽に会えません・・・
今日から6月です。“衣替え”ですが、今日は曇天の肌寒い1日になりました。
ドクターヘリも今日は要請がなく、静かにやや寂しそうに屋上ヘリポートのたたずんでおり、天候もさらに崩れそうなので夕方に群馬ヘリポートに退避していきました。


先日車では1時間近くかかる地域から転院搬送の患者受入の要請がありました。話を伺うと重症なうえに複雑な病態がかかわっていました。受入を決めたとともに重症かつ早期治療の必要があるため、ドクターヘリで当院へ搬送することとしました。

ドクターヘリは医師・看護師を現場に運ぶことで治療を早く始められる大きなメリットがありますが、医師や病院が少ない地域では救急搬送された重症患者を、さらに高度の医療を行うための医療機関に早期搬送を行うための任務もあります。実は転院搬送される患者さんは全例が重症患者であるため、現場出動のときと同じくらいいろいろなことに気をつけなくてはいけません。転院搬送でもただ患者さんを搬送するだけではなく、まず搬送元の病院やランデブーポイントでフライトドクターの処置が必要になることもあります。

屋上ヘリポートでヘリ到着を
“まだかまだか”と待っています。

患者の受け入れは即決でした。しかし救急科だけで対応できる症例ではありません。ドクターヘリが向かっている間に、協力が必要な3つの科のオンコール医師に連絡し事情を説明したところ休日にもかかわらずすぐに皆さん駆けつけてくれました。すぐに救急外来で4科8医師による治療戦略会議がおこなわれ、いざドクターヘリを迎えに屋上ヘリポートへ向かいました。搬送元の病院スタッフとフライトドクター・ナースにより安定した状態で当院ヘリポートに無事到着し、救急外来では救急科がリーダーとして初療を行いながら、その間に各科で再評価と治療戦略の最終決定を行いました。すぐに緊急手術の方針となりましたが、その時は“1分でも早く”ではなく、1“秒”でも早く治療を開始したいという救急外来スタッフが全員同じ思いでした。
麻酔科の先生もすぐに駆けつけ、救急外来や手術室の看護師のてきぱきとした準備で、すぐに連続する2つの手術が開始することができ、最終的に2つの命を救うことができました。


救急外来のホットラインを持っているとき、一人でも多くの命を救うためにできるだけ早く患者さんと接触するためのあらゆる手を考えます。しかしそれは各科の協力があってこそだとこの時あらためて感じました。あの日の午後に情報も少なくそしてまだ見ぬ患者さんのために8名の医師が集まり救急外来のど真ん中で話し合っているなかに自分もいて、病院一丸で高度救命救急センターをささえている環境で働けていることのありがたみを感じました。
これからは救命だけではなく後遺障害も減らすために、“秒”単位の時間短縮までもっと意識した活動にこだわって行く必要があります。消防のヘリ要請までの時間、要請から離陸までの時間、現場着陸から患者さん接触までの時間、ドクター・ナースの一つ一つの手技の時間などなど・・・それぞれがたった数秒の時間短縮でも、それらが合わされば分単位の時間短縮ができますね!


☆☆群馬県ドクターヘリ 2011年5月実績(速報)☆☆

<要請・出動>
ドクターヘリ要請:54件
ドクターヘリ出動:42件、未出動:12件
・現場出動:33件
・施設間搬送:6件
・出動後キャンセル:3件(キャンセル率:7.1%)
・その他の出動:0件

重傷者の発生が少ないことにこしたことはありませんが、要請数はまだまだ伸び悩んでいます。“オーバートリアージを許容→アンダートリアージは罪”です。

<要請元消防本部>要請/出動
・前橋市消防 17/12件
・渋川広域消防 8/6件
・太田市消防 6/4件
・吾妻広域消防 6/3件
・桐生市消防 5/5件
・多野藤岡広域消防 5/5件
・利根沼田広域消防 3/3件
・館林地区消防 2/2件
・伊勢崎市消防 1/1件
・富岡甘楽広域消防 1/1件
・高崎市等広域消防 0/0件

先月は現場直近にも2回着陸しました。
今月は新たに8ヶ所のランデブーポイントを使用させていただき、使用したランデブーポイントは222ヶ所になりました。特に5月は現場からより近いランデブーポイントを指定していただけた印象がありました。 1秒でも早い患者接触のために、今後ともできる限り直近のランデブーポイントの指定をよろしくお願いします。早い接触のためであれば、現場直近やランデブーポンとから医療スタッフ派遣も積極的に考慮してください。





<搬送先病院>
・21名 前橋赤十字病院
・4名 群馬大学医学部付属病院
・2名 高崎総合医療センター、公立藤岡総合病院、桐生厚生総合病院
・1名 足利赤十字病院(栃木)、獨協医科大学病院(栃木)、群馬県立心臓血管センター、公立富岡総合病院、利根中央病院、恵愛堂病院、本島総合病院、総合太田病院、館林厚生病院

新たに1病院に患者さんを受け入れていただきました。今まで群馬県内34病院、群馬県外8病院にご協力をいただいております。

詳細な実績がまとまりましたら、群馬県ドクターヘリホームページに更新します。

今年は群馬ディスティネーションキャンペーンがあります。
群馬のゆるキャラ“ぐんまちゃん”がお待ちしています。
ちなみに高崎市は“だるま”生産日本一です!

コメント

  1. お疲れ様です。ご無沙汰しています。震災関係が少しは落ち着いてきても、変わらずお忙しい毎日かと思います。今年は災害救護関係から救急法等講習普及担当に変わり、今、臨床救急医学会で札幌に来てます。毎年仕事が変わり、頭はもはやワッショイ状態ですが、旅費分の仕事はしないと、なんて毛ガニをを見ながら頭を抱えています。これから中野先生の演題があり、興味深い項目あったので拝聴しに行ってきます。ガイドラインがなぜにそんなに一分一秒の短縮にこだわるのか、前は正直担当でもないし、あまり考えもしなかったのですが、記事を見て現場はこんなにも努力されてるのを、いかに少しでも状態良く医療機関に引き継ぐようにできるかを多くの方に伝えることが自分の仕事だと自覚する機会になりました。ブログ、最近はいろんな方が書いておられますね☆また来ます!皆様大変お忙しいと思いますが、お体大切に職務に励まれてください⊂((・x・))⊃

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  2. 匿名さん、お久しぶりです。
    災害救護に引き続き救急法の指導とご多忙のようですね。お疲れ様です。今回の臨床救急医学会は故郷の札幌開催とのことですが、今回は留守番で病院を守っております。
    1分1秒の積み重ねが救命率そして社会復帰率をあげると信じていつも活動しています。初療の出来がそれから引き続く根治治療に大きな影響を与えます。だから時間短縮にこだわっているんですよ。
    これからいろいろな方の記事が登場するよていなので、こうご期待を!

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