“からっ風”とのたたかい

JR東京駅から下りの上越新幹線に乗り、新幹線が高崎駅に近づくにつれ、車窓に広がる赤城山の美しさに、はっと息をのむことがあります。
赤城山は日本百景にも選ばれる、群馬県のほぼ中央に位置する美しい山ですが、「からっ風」という大変強い季節風を吹き下ろす山としても有名です。 別名「赤城おろし」とも呼ばれるこの強風の出発地点は、大陸のシベリア高気圧から日本列島に向けて吹いてきた風です。それが群馬・新潟県境の山岳地帯にぶつかることで上昇気流となり、日本海側に大雪を降らせます。山を越えた風は水蒸気を失っているので、非常に乾いた冷たい風となって関東平野に吹き降ろします。これが赤城おろしです。 主に11月頃から4月頃にかけて「からっ風」は群馬に吹き荒れますが、群馬県人はその季節になるとこの風とたたかう毎日になります。


~実際にあった話より~
普段は飛行時間15分くらいの山間(当院から直線距離で約50Km)への出動で、からっ風の吹きつけるある冬の日、飛行時間が行き18分、帰り12分と同じ距離なのに6分の差があり、対地速度も行き約190Km/h、帰り約270Km/hで、乗っていてあきらかなスピードの差を実感。


旗のたなびき方が
横ではなくて上向きなんですよ!

今日も群馬は朝から強い北風が吹き荒れています。群馬にとって冬の強い北風、いわゆる“からっ風”は名物でもあり毎年恒例のことでもありますが、ヘリコプターにとって強風は大敵です。特に当院は屋上へリポートのため、強い北風そのものと病院の建物にあたってできる上昇気流が入り混じり、ヘリコプターの離発着ができなくなることもあります。
しかしながら、風の強さによっては屋上へリポートで離発着困難でも地上へリポートでは離発着可能であることがあり、強風の時は群馬へリポートで待機しています。昨日も風が強く終日群馬へリポート待機でしたが、地上待機のおかげで2件出動することができました。今日も昨日同様に群馬へリポートから2件の出動することができました。(ちなみに病院のCS室のカメラからは、屋上の風の強さを示す旗が横向きではなく上向きにたなびいていました・・・)



群馬ヘリポートで給油中のドクターヘリ。
給油所の方はとても親切で、出動するとき
いつも手をふって見送ってくださいます。
今月は23日のうち10日は群馬へリポートに強風のため退避しています。そして約4分の1にあたる12件の出動は群馬ヘリポートで待機していることによって要請にこたえることができました。先月も強風による退避日が7日ありましたが、出動が54件/月と今までで最も多い月となりました。そして今月は今日ですでに50件の出動となっています。

群馬ヘリポート待機の難点としては、医療スタッフもドクターヘリと一緒に病院から離れてしまうため救急外来のスタッフの仕事がきつくなったり、急遽退避した場合は手ぶらのため昼食をとりそこなったり何もすることがないまま待機することもあります。


群馬ヘリポートからの出動。
ヘリポートの方の“お気をつけて!”
の一言に力をいただきます。
また、強風で当院屋上へリポートが使えないときは他の病院の屋上へリポートも使えない場合が多いので、搬送の際に群馬ヘリポートで前橋市消防救急車に乗り換えて前橋市内の病院に搬送しています。搬送先病院から群馬ヘリポートに医療スタッフが戻るのに時間がかかるため、連続出動に対応できない場合も出ています。ただ最近になって、患者の状態や次の要請があった場合に、搬送先病院近くのランデブーポイントに着陸させていただけるようになりました。(毎回かつ全消防でこのような対応をしていただけるともっとうれしいのですが・・)





1件でも多くの要請にこたえるためにいろいろと運航上の工夫をしています。ようやく当院の移転が決まったので、新病院の建設の際は地上へリポートで格納庫、給油施設つきでお願いしたいと考えています。ちなみに群馬県知事は、“自衛隊のヘリコプターも着陸できるようにしたい!”とおっしゃっていました。

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