『ビデオ硬性挿管用喉頭鏡講習』参加報告。~救急救命士の処置拡大に関して~

皆様,いかがお過ごしでしょうか.前橋赤十字病院 集中治療科・救急科 原澤です.

今回は,本年2月に開催された『ビデオ硬性挿管用喉頭鏡講習』に参加して参りました.だいぶ前の出来事となってしまい恐縮ですが,救急救命士の皆さんの活動への理解を深めていただくという意味もあり,記事を書かせていただきました.
 
 


救急救命士は,患者さんに対する様々な処置を行いながら,医療機関まで患者さんを搬送してきてくれます.その処置の中に,「気管挿管」というものがあります.高度な医療処置で,口の中を直接覗き込みながら,気管の中に専用の管を入れ,肺に直接空気を送り込むことができるようにする,というものです.我々医師はこの処置を様々な場面で行います.全身麻酔をかけておこなう手術のとき,呼吸状態が悪いとき,意識状態が悪いとき,などなどですが,ある程度の技術が必要な処置ですので,当然トレーニングが必要です.
救急救命士は,この処置を「心肺停止状態」にある患者さんにのみ施行して良いこととなっていますが,施行できるようになるには「認定」をもらうことが必要です.各地域で救急救命士の処置の質を保障するために,基幹病院での「気管挿管実習」などをおこなっています.皆さんのご理解とご協力をいただきながら,いざという時の備えをしているわけですね.


この「気管挿管」という処置に関係してくるのが,タイトルの中にある「ビデオ硬性挿管用喉頭鏡」というものです.

 
一般的な気管挿管に使用する「喉頭鏡」という器具があります.これは,舌と下顎を動かして(持ち上げて)気管の入口が見えるようにする,というものですが,この処置に際してはどうしても首を大きく動かす必要があるため,頸部が動かせない理由がある患者さんにはおこないづらいことがあります.それ以外にも,喉頭鏡での操作では気管の入口が確認できない患者さんがいます.こういった患者さんにも処置をする必要がある時に,その補助として「ビデオ硬性挿管用喉頭鏡」が有効な場合があります.これはビデオカメラが先端についた喉頭鏡で,喉の奥の正しい位置に喉頭鏡を入れれば,カメラの先端が気管の入口を映し出してくれ,そこをめがけて管を入れる,という処置が可能となるものです.比較的新しい器具なのですが,医療機関での有用性が認められ,これを救急救命士の処置にも利用できるようにしよう,という動きが出てきました.


群馬県では,昨年から「ビデオ硬性挿管用喉頭鏡」を使用するための教育として講習を開催し始め,また「ビデオ硬性挿管用喉頭鏡」を使用した活動が実際に現場でできるように県内での体制整備を進めています.平成273月に,県として「ビデオ硬性挿管用喉頭鏡」を用いた活動の具体的内容(救急活動プロトコル,といいます)を作成しました.現在はそれを各地域で開始するかどうか調整している段階です.

このように,
①実際に器具を使った活動ができる人材を育て,
②その器具を使った活動の内容を保障する仕組みづくりをする,
という2点がそろって始めて,実際に現場での活動に活かすことができるわけです.
ややこしいですよねこの煩雑さは,救急隊の活動の難しさ,重要さを物語っています.


今回は,この①実際に器具を使った活動ができる人材を育てる,ということに参加してきました.
参加してくださった救急救命士さんは,皆さん実力のあるベテランばかりで,理解もはやく順調に講習は進んでいきました.最後の実技試験をおこないながら,実際の活動を想定していろいろな議論がなされていました.私も議論に加わっていて参考になる点がいくつもあり,勉強になりました.

こういった教育活動に参加すると,自分一人でできることがいかに少ないか,教育し広めていくことがどれだけ重要か,ということを実感します.一人でも多くの患者さんが,適切な治療を的確なタイミングで受けられるように引き続き尽力していきたいと思っています.

(元)センター長も率先して参加していました!

長文失礼致しました.最後まで読んでくださった方々,ありがとうございました.
 




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