「ベッドサイドに張り付いて見ていろ!」~研修医制度へのちょっとした苦言・・・~

町田です。
本日から3日間、東京のお台場で第42回日本集中治療医学会学術集会が開催されています。当院からも中野センター長、宮崎先生が座長として、また宮崎先生をはじめ医師7人、看護師1人より演題を発表させていただきます。会場で見かけましたら何なりとご質問、ご意見をよろしくお願いします。


僕はもともと外科系の医師をしていました。当院のICUのシステムと違い僕が学ばせていただいた大学病院は各科で術後ICUに入室した患者さんの管理を行っていたので、特に開心術後はずっと朝まで張り付いて患者さんを見ていた記憶があります。
いまは医学も発展し様々な病態のメカニズムがより詳細にわかってきています。今回の学会の抄録集を読んでいても、15年前に自分がしっている知識の何百、何千倍もの発展があるように感じます。治療法もより高度でより洗練されてきていて、15年前には治療困難と言われていた患者群が、今では普通に救命、社会復帰を得られています。

でも残念なことがあります。すべての病院にあてはまるかどうか知りませんが、ICUのベッドサイドに張り付いてみている研修医が減っています。自分がローテーションしている科の術後患者がICUに入っても、全員とは言いませんが入室時とカンファレンスの時に顔を出すくらいな印象しかありません。
どんなにモニターが発展しエコーなどの画質が良くなっていても、理論通りに必ずしもいかないところが重症患者管理の難しいところです。しかし重症患者さんは常に身体所見から様々なサインを発しています。それを見逃さずにすぐアクションを起こすことで、より早い回復が得られるものです。研修医時代の僕は決して知識は豊富ではなく(今もですが)、夜中ずっと患者を「診る」というよりも「見ている」という感じでした。しかし誰よりもICUの患者の変化に対応していました(正確には『サインに気が付いた看護師の報告にすぐ反応した』ですね)。そばで見ていることはとても大切なことなのです。

いろいろ書きましたが、当院の初期研修医はみんなまじめで勉強熱心で、そしてしっかり患者を診ています。当科のローテーションをしていると、何度も患者さんを診察して頭を悩ませながら真剣に良くするための努力をしています。
困ったことに「時間外は働かせるな!」「当直は月〇回以内にしろ!」など、いまの研修医制度のしばりが厳しい現状があります。研修医にやる気があって自主的に残りたい気持ちを尊重したくても、「しばりを守らないと研修病院の評価を下げられる」というプレッシャーが病院にかけられているので、「残っていいよ」と積極的にいえない事情を抱えています。(逆に残らせようとすると「それは古い考え方だ」と上級医が責めらえる雰囲気も・・・)

とくに集中治療はできるだけ短期間で患者さんにより有効な医療を提供できるかにかかっています。つねに『ICUは長居する場所ではない!』ということを忘れてはいけません。
当院は本当にハートの熱い研修医が集まっています。その熱い心を邪魔せずもっと患者さんのそばについていることを制限されない研修医制度になってほしいと切に願います!

コメント

  1. 佐藤たいすけ2015年2月9日 15:39

    町田先生お疲れさまです。
    ブログ楽しみにしております。確かにICUはいつ急変するかもわからない救急患者さんの病室ですから担当する担当いも主治医も気が気ではないと思います。お疲れ様です

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    1. 佐藤さん、コメントありがとうございます。1日でも早くICUから一般病棟に、そして一般病棟から自宅へ退院できるように、これからもしっかりベッドサイドで患者さんの声、サインに耳を傾けていこうと思います。

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  2. 町田先生 お疲れ様です。

    張り付いてみないとわからないことも多いですよね。
    そこから多くのことを学びます。

    患者さんの刻々と変わる状況とか、自分がいじった呼吸器の設定でどう呼吸循環が変わるか。。

    はたまた看護師さんの苦労がわかったり・・・

    最近は先生が仰るように「残れ!」とは言えなくなってますね。
    とっても残念で、長い目でみれば、良いチャンスを奪うことになっている、と思うのですが。

    これからもお互い頑張っていきましょうね(>▽<)b

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    1. 長嶺先生、貴重なコメントを頂きありがとうございます。
      ICUのベッドサイドは、自分で行った治療の反応をリアルタイムで感じることができたり、医師以上に患者さんのことを診てくれる看護師さんとの貴重な意見交換の場でした。僕も新人時代になかなか聞きにくい質問を、上司がいない間にこっそり看護師さんに教えてもらったり、患者さんの反応に一喜一憂して多くのことを学びました。その時に得た感性は今でも大切にしています。
      指導医の立場になりやる気のある研修医の気持ちをどれだけ生かしてあげる環境にするか、様々なところに働きかけていこうと思いますが、もちろん研修医も上級医に甘えず自分で何とかしようとする覚悟も持ってもらえるようにしていきたいと思います(もちろんフォローはしますが・・・)。

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