『とりあえず準備お願いします!』~防災ヘリとの連携~

町田です。

11月に入り3連休もあったせいか、ドクターヘリの要請件数が増えています。4日間で16件の要請をいただいていますが、今月もすでに5件の未出動があります。1件は消防のオーバートリアージを恐れない早期要請によるもので、これはいくらあっても問題ありません。1件は群馬名物の北風の強風による運航不可で、残り3件は重複要請でした。
先月も11件の重複要請があり、うち他手段でセカンドスタッフを送り込めたのは1件だけでした。しかし、今月はすでに1件に対して防災ヘリドクターヘリ的運用でセカンドスタッフによる対応を行っています。

群馬県消防防災ヘリ『はるな』は主に救助事案、火災消火活動、他県への転院搬送などで活躍していますが、ドクターヘリが導入されるまでは県内の重症患者の転院搬送やドクターヘリ的運用による現場出動も積極的に担っていました。
ドクターヘリが導入された後も防災ヘリドクターヘリ的運用は残っており、重複要請などはこの運用で僕たちも現場に向かうことがあります。

*防災ヘリドクターヘリ的運用とは、医師による早期医療介入が必要な状態や転院搬送患者の重症度が高いときに、基地である群馬ヘリポートを離陸後に当院屋上で医師、看護師をピックアップして、現場ランデブーポイントや転院搬送元へ出動するシステムです。

群馬ヘリポートで離陸準備中の『はるな』

実はドクターヘリと違い、防災ヘリはおもに救助活動用に整備されて待機している場合がほとんどです。つまりドクターヘリ的運用を行う際には、機内の装備を救急搬送用に入れ替えなくてはいけません。さらに、ドクターヘリよりも消防本部が防災ヘリを要請するための指示系統が複雑のようです。そして当院ではピックアップで出動できるセカンドスタッフがいるかどうかも確認が必要になります。
防災ヘリドクターヘリ的運用を開始した当初は、要請が入ってから①出動できる医療スタッフがいるかどうか確認、②消防本部がいろいろな手続きを経て防災ヘリを要請、③防災ヘリが救助仕様から救急仕様へ換装、という流れでの出動であったため、要請から出動まで下手すると40分近くかかることがありました。群馬県の地理を考えると、40分後の出動でも防災ヘリで向かった方が有効な地域は限られてきます。

もちろんこのような状態を続けているわけではありません。今は要請から10分後には出動です!
昨日も重複要請がありましたが、その時ドクターヘリは前事案の現場直近にこれから着陸するところでした。しかも現場が比較的遠いところであったためすぐにドクターヘリは戻ってこられないと思った瞬間に、防災ヘリへ『とりあえず準備お願いします!』と一言伝えました。
まだセカンドスタッフの有無、ドクターヘリの帰還可否、消防が防災ヘリをリクエストするかどうかはわかりません。でもここでスイッチを入れることが大切です。すべてが整ってからの準備ではタイムロスが大きすぎます。準備をしていただきながら、セカンドスタッフの確保をして、ドクターヘリより防災へリの方が早いと判断し消防本部に進言しました。すぐに消防本部から防災航空隊に要請が入り、15分後には当院屋上から医師2名が現場に向かうことができました!


このような迅速な動きができるようになってきたことの理由は2つ・・・
1つは各消防本部内での防災ヘリ要請の手順がシンプルになってきていることがあるようです。命を救う現場に向かうのにハンコはいっぱいいりません。まずは通信指令課の方々がスイッチを早く押す環境が整ってきているように感じます。
そして何よりも防災航空隊の皆さんが、『未出動やキャンセルになっても問題ないから、空振りでもいいから声かけてもらえれば準備しておきますよ!』といつも笑顔で答えてくれることです。

防災ヘリはドクターヘリにより何年も前から群馬県民の命を空から守ってくれています。後輩のドクターヘリはこれからも先輩の背中を追っかけ、そして多くのことを教えていきながらこれからも協力体制を強化していきたいです。
1ヶ月後には今年度第2回群馬県ヘリコプター合同勉強会も行う予定です。防災航空隊、県警航空隊、陸上自衛隊第12旅団、赤十字飛行隊、そしてドクターヘリの顔の見える関係の強化にこれからも努めていきます。

防災ヘリ、県警ヘリ、ドクターヘリの連携
(2013年度は11月3日まで分)

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