“桐生市消防本部通信指令課との情報交換会”を開催しました。

集中治療科・救急科の町田です。

群馬県ドクターヘリでは3ヶ月に1度当院にて症例検討会を開催していて、毎回消防をはじめ各関係機関の方々に参加していただいております。しかしながら3ヶ月に1度の数時間の会の間だけではなかなか意見交換ができないことがあり、今度はフライトスタッフが各関係機関に足を運んでいろいろ意見交換(本音、愚痴もOK!)をしたいと考えておりました。
ドクターヘリが運航開始してから群馬県内各消防本部と協力(時には衝突も?)して活動してまいりましたが、運航開始当初より要請基準や統計データのまとめ方などでいろいろ意見交換することが多かった“桐生市消防本部通信指令課”と昨日情報交換会を開催しました。

昨日はドクターヘリ待機終了後(昨日の日没16時29分)にフライトスタッフが桐生市消防本部に向かい、17時30分から開始予定になっていました。
ランデブーポイントから見た
桐生市消防本部
(当院からヘリ10分、車60分)
夕方までに3件出動があり、15時50分からデブリーフィングを行っていたところ、15時58分(要請終了1分前)にホットラインが鳴り響きました。もちろん迷うことなく機長、整備士、ドクター、ナースで屋上へリポートまで駆け上がり(エレベーターですが・・・)すぐに離陸。現場までは約5分、すでにランデブーポイントの安全確保もされており救急車も到着済み。残された現場滞在時間10分で、第1印象で重症であればヘリは先に帰還してもらう予定でしたが幸い致命的なダメージはなさそうで、ABCDE安定を確認し全身観察および必要な処置が終了後ドクターヘリにて当院に帰還しました。当院着陸は16時29分、日没時間ぴったりでした!救急隊現着後のすばやい判断と現場診療での多大なる協力体制でドクヘリ対応に間に合いかつ日没までに帰還できた症例でした。
片付けが終了後、車にて桐生市消防本部に向かいましたが、夕方のラッシュもあり1時間以上かかってようやく18時過ぎに到着しました。30分以上の遅刻にもかかわらず通信指令課長をはじめ非番日の方も含めて通信指令課の皆さんが出迎えてくださいました。(ちなみにこの日の2件目の出動は桐生市内で、消防本部の隣の陸上競技場に4時間前に着陸していました・・・)


桐生市消防本部内の通信指令室にて、18時15分から情報交換会は開催されました。
“桐生市消防本部通信指令室”
ドクターヘリ要請時は勤務者
総動員で活動するとのことです!

通信指令課長からご挨拶をいただき、続いて通信指令センターの見学をさせていただきました。勤務体制の説明をいただき、実際に119番が入ったときにどのような通信、指揮命令が行われるのかを実際にみさせていただきました。そしてドクターヘリの要請の際に実際どのようなうごきをするのか詳細に教えていただきました。桐生市消防本部の場合は、通信指令課の各PCの横に群馬県ドクターヘリ要請基準がパウチ化されておいてあり(すでに頭の中にほとんど入ってしまっているとのこと!)、実際にドクターヘリ要請と判断(通信指令課への119番の段階、もしくは救急隊からの依頼)した時点で、1人はすぐに当院CSにヘリ出動要請(ものすごい時間短縮になりますね)、1人は支援隊の調整連絡、そして発災地点がわかったらすぐに直近のランデブーポイントがわかるようなシステムになっており1人はランデブーポイントの使用許可の連絡、もちろん最初に電話を受けた指令員はその対応と少なくとも4人は同時に動き(時には課長も自ら動いているとのこと!)より早く要請するための努力をしているとのことでした。特にランデブーポイントが決まってからドクターヘリ要請では時間が遅くなるため、使用許可をもらうのはドクターヘリ要請後からという考え方で動いている点に驚いたとともに、桐生市消防管轄(桐生市、みどり市)に関してはランデブーポイントの管理者(施設長や学校長など)が使用許可をお願いしたときにほとんど断られたことがないということに感動しました。

つづいて私より、先日の日本航空医療学会で発表させていただいた“消防覚知から30分以内に治療開始するための取り組み”について解説させていただき、また県全体と桐生市消防におけるドクターヘリ実績について情報提示させていただきました。県全体でドクターヘリ要請まで時間は早くなってきていますが、特に桐生市消防本部に関しては消防覚知からドクターヘリ要請までの早さ、覚知要請率の高さ、適切なキャンセル率が県内でもトップレベルの実績を示しています。そして、同じく先日の学会で話題に上がった兵庫県但馬ドクターヘリで導入されている“キーワード方式の要請基準”について簡単にお話させていただき、これだけ早く要請している指令課の方からでも群馬県にもあっていいのではないかというご意見をいただきました。

最後は自由に意見交換を行いました。そのときに出た話題を以下に列挙します。
・CS(=県)と消防本部で統計をリンクできないか?
・ドクターヘリが消防無線をもてないか?
・現場直近での安全確保について・・・
・ドクターヘリと防災ヘリで要請の手順が全然違う!
・未出動の分析も行う必要性がある。
・未出動、出動後キャンセルの中で本当にアンダートリアージがなかったか症例検討が必要。
・時間分析に加えて生存率が改善しているか解析して欲しい。
・キーワード方式の導入に役立つ119番のときの一般市民の声を分析できます!
などなど、本当に活発な情報交換が行われ、この会が終了したのは21時頃になっていました。

普段は無線でやり取りしていますが、
今回お互いの顔を見ながら話しをすることができました。
今回はじめてフライトスタッフがドクターヘリに関わる機関に訪問させていただきましたが、訪問することによってその職場の雰囲気を感じることができ、そしてドクターヘリに関する率直なご意見をうかがうことができました。ドクターヘリ出動する事に関してあらためて大きな協力の下で活動させていただいていることをあらためて認識し、そして傷病者にとってより有効な活動ができるよう消防もフライトスタッフもまだまだ検討事項があることがはっきりしました。
最後に今回の会を企画するにあたり桐生市消防側の担当となっていただいた方より、“今回の会は桐生で開催しましたが、桐生だけがよくなるのではなく群馬県全体がよくなるようフライトスタッフの皆さんの今後の活動に期待します”という言葉をいただきました。ドクターヘリは県民全員の命を守るためにあります。今後も消防関係者との情報交換会を続けたいと考えており、ランデブーポイントとして協力していただいている学校関係者や一般市民の皆さんへも広報活動が必要だと思っています。今後とも群馬県ドクターヘリへのご協力・ご理解のほどよろしくお願いします。


ドクターヘリの支援には
さすがに出ないそうです・・・

桐生市消防本部の1階にミニチュアの消防車がありました。このミニチュアはゴルフカートをもとに廃車になった消防車の部品を集めて消防隊員が作ったもので、20年以上は消防本部に存在しているとのことです。しかも実際に放水もできるとのことで、幼稚園・保育園などのイベントに実際に出動しているそうです。一見の価値ありですよ!

コメント

  1. 昨日、家の近所のグラウンドにドクターヘリが着陸しました。
    たまたま居合わせた子供達は驚きと緊張で大騒ぎでした。(ドラマで観ていたせいもあるかもしれません)
    私自身も尊い命をつなぐためにこんなにも沢山の人が関わっているんだという事を実際に目の当たりにして初めてわかりました。
    日没間近の空へ飛び立って行くヘリを見ながら、状況こそわかりませんが搬送されて行った方の無事をみんなで祈りました。
    大変なお仕事だと思います。
    これからも体に気をつけて頑張ってください。

    返信削除
  2. フライトドクター2010年12月12日 13:01

    匿名様

    あたたかいコメントありがとうございました。実は本ブログにいただいた始めてのコメントなんですよ。
    ドクターヘリの活動は、本当に多くの方の協力と、そして一般市民の皆さまのご理解があって始めて成り立っております。
    着陸の際はいろいろ騒音等ご迷惑をかけたかもしれませんが、一人でも多くの命を守るためもがんばりますのでこれからも応援のほどよろしくお願いします。

    返信削除

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